31 ページ31
最近、彼を冷たくあしらってしまうことがある
彼、月貴君は私がそうしても傷ついた素振りを見せない
それが尚更辛い
私はもう、飽きられてしまっているのではないか
そんなことを考えてしまう
そう思うのなら、思い切り甘やかせばいい
離れられない程に
けれど、どうしても耐え切れない
入間君は月貴君の友人
私は月貴君の恋人
そう割り切ればいいものを
月貴君は自分から他の人のことを話さないから
どうしても気になってしまって
「最近、入間君とよく会っているのかい」
なんて聞いてしまう
「忙しいみたいで、あまり」
安心感と、頻繁に連絡はとっているのかと心に暗雲が立ち込める
しかも
今日は件の彼と出掛けると言っていたから、尚更
＿
「最近忙しそうだな」
「ああ、でもこの間一山片付いたから、しばらくは休めそうだ」
ぐっと腕を伸ばす銃兎に「おつかれさん」と日本酒を注ぐ
前はプライベートでの飲みは控えていたが、内勤になってからは肝臓に物足りなさを感じることがままある
寂雷さんは、以前クラブにいらした時判明したが、飲むと性格が変わってしまうため迂闊に勧められない
つまり、クラブの人間以外で乾杯できる貴重な友人だ
「っはー…仕事終わりの一杯は効きますね」
「なんだよ、おっさんみたいに」
「実際、もうそんなに若くもないだろう？」
そうだなぁ、と、意地の悪い笑みにつられつつ酒を流す
銃兎は酒が強い方ではないらしく、既に頬が赤い
ドーパミンによってか、銃兎の口元が緩む
「なんだよ、ニヤニヤして」
「こうやってお前と飲み交わすことができる…神宮寺さんに感謝しないとな」
確かに、そうだ
寂雷さんが背中を押してくれなくては、俺は銃兎に連絡を取っていなかっただろう
「そうだな…ほんと」
寂雷さんがいてくれて、よかった
「虫も殺さぬ、と聞いていたが…友人思いの人なんだな」
「…うん？」
俺が小首をかしげると、銃兎も同じように首を傾げる
「…え、なにか変なことを言ったか？」
いや、変なことというわけではない…のだが
「友人思い…？」
「言っていたぞ、月貴の友人だと。…違うのか？」
銃兎は恐らく、俺の認識で寂雷さんは友人なのだろう、と聞いているのだろう
傍から見れば、何もおかしくはない
何も
「…あの人が、そう言ったの？」
「ああ。前、美術館前で会った時に」
俺の中で、何かが壊れる音がした
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 123人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒプノシスマイク」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Last(プロフ) - いおさん» ありがとうございます。詩的な表現に気を遣っていたのですが、そう言っていただけてとてもうれしいです。完結までよろしくお願いします。 (2019年6月1日 21時) (
レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
いお(プロフ) - 素晴らしすぎる作品ですね…!続きが気になり過ぎて堪らないです!!文章も綺麗で、何から何まで素敵な作品です…!!これからも頑張ってください…!! (2019年5月28日 23時) (レス) id: 1d7aa46e15 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 彩華さん» ありがとうございます。お話も割と終盤ですが今後も楽しんでいただけるよう頑張ります。 (2019年5月26日 15時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - しんどい…好き…めっちゃ心抉られるくらいキュンときます…俺的にはどストライクすぎます。作者さん好きです（） (2019年5月25日 0時) (レス) id: 3d53cc1cd6 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 腐女神さん» ありがとうございます。完結まであとわずかですが今後とも気長に待っていただけると幸いです。 (2019年5月19日 2時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Last | 作成日時：2019年4月27日 1時
