16 ページ16
水中では呼吸さえままならない
魚なら
痛みも感じず
「先生…カレー、おかわりしてください。冷めちゃいますよ」
先生の優しさは
いつも俺を刺す
一片の容赦もなく
「六堂君」
呼ばないでくれよ
痛い
「君は、私に好意を抱いているのだよね？」
「…そうですね」
先生は？
なんて聞いたら
この関係は
終わってしまうんだろうな
やめてほしい
俺を何度殺すんですか
痛い
やめてください
この体は
「先生？俺は、先生を困らせたいわけじゃないんです、だから」
血が流れなくても
痛みを感じるから
「邪魔なら、そう言っていいんですよ」
痛い
苦しい
好きな人と一緒にいて
一緒に料理をして
幸せなはずなのに
「ひとつ、知っていてほしい」
また
リップサービスですか？
もう真に受けませんよ
「私は君を邪魔だと思ったことは一度もないよ」
嘘吐き
「じゃあ、どうしてそんな顔するんですか」
腰に回された手から伝わる体温も
恋人っぽい会話も
全部、全部
偽りだ
残ったのは
眉間に皺を寄せ
窺うように細められた鋭い眼光だけ
手を伸ばす
頬に触れる
温かい体温
俺は
この人に恋人を強いているのだろうか
と
先生の手が
俺の手に触れた
「私は」
その強い口調に驚く
怒ってる？
「…君に、悲しい顔をしてほしくない。けれど…どうしたらよいのかわからないんだ」
ポツリと
最初の雨粒みたいな声
縮こまる迷子みたいな
気が付けば先生の顔は
そんな風になっていた
俺がそんな風にさせたのか？
おかしいな
いつだって完璧で
冷静だと思っていたこの人でも
こんな顔をするんだ
…嬉しいな
そんなことを言われるなんて
掴まれている手の指先で、先生の顔を撫でる
「先生、かわいい」
思わず笑ってしまう
すると拗ねたように先生がムッとする
「からかっているのかい？」
「いつもの仕返しです」
ああ
何とも思っていない人間で
先生はそんなに悩むんですか？
これも演技なら
先生はホストに向いているのだろうけれど
…けれど
今は
今だけは
自惚れてもいいですか？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 123人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒプノシスマイク」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Last(プロフ) - いおさん» ありがとうございます。詩的な表現に気を遣っていたのですが、そう言っていただけてとてもうれしいです。完結までよろしくお願いします。 (2019年6月1日 21時) (
レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
いお(プロフ) - 素晴らしすぎる作品ですね…!続きが気になり過ぎて堪らないです!!文章も綺麗で、何から何まで素敵な作品です…!!これからも頑張ってください…!! (2019年5月28日 23時) (レス) id: 1d7aa46e15 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 彩華さん» ありがとうございます。お話も割と終盤ですが今後も楽しんでいただけるよう頑張ります。 (2019年5月26日 15時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - しんどい…好き…めっちゃ心抉られるくらいキュンときます…俺的にはどストライクすぎます。作者さん好きです（） (2019年5月25日 0時) (レス) id: 3d53cc1cd6 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 腐女神さん» ありがとうございます。完結まであとわずかですが今後とも気長に待っていただけると幸いです。 (2019年5月19日 2時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Last | 作成日時：2019年4月27日 1時
