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「…六堂君」
「は」
口にしようとしても、思いの外簡単にはできなかった
なんだか、呼び方というのは
二人にとって
とても重要なもののように思えた
「君が、私を下の名前で呼ぶまでは」
彼はもっと
簡単に折れると思っていたのだ
けど、そうしなかった
薄々感じてはいた
もはや限界が近いのかもしれない
なぜ苦痛に思うのか
「先生…カレー、おかわりしてください。冷めちゃいますよ」
その悲しそうな笑みが
寂しそうな目が
どうしてこんなに胸に刺さる
「六堂君」
呼び慣れなくても呼んだ
確かめたかった
「君は、私に好意を抱いているのだよね？」
空中分解でも構わない
はずだった
「…そうですね」
彼の一挙一動が
刺さる
ザイオンス効果
最近頻繁に会っているから
そう思ってしまうだけのこと
同性のカップルは長続きしないのが常らしい
だったら
そう
いつか来る『その時』が
近いだけのこと
彼の幸せは
別の場所にあるという事
本当にそうか？
君は私に好意を抱いている
私は？
私は君に興味を抱いている
自分の我儘と彼の想いを天秤にかけて釣り合うと
自分勝手に決めた
「先生？俺は、先生を困らせたいわけじゃないんです、だから」
どうして
こんなに
息苦しいのか
「邪魔なら、そう言っていいんですよ」
なぜそんなことを言うんだ
私は、そこまで君を追い詰めただろうか
泣きそうな顔をしないでくれ
「ひとつ、知っていてほしい」
私は君になにができる
嘘でも『好き』を言えたなら
君を繋ぎとめられるのか
嘘？
「私は君を邪魔だと思ったことは一度もないよ」
繋ぎとめたいのか
私は
こんな言葉で
君が笑って喜ぶはずもないのに
どうしたら正解なのか
わからない
「じゃあ、どうしてそんな顔するんですか」
その質問に首を傾げる
私は今どんな顔をしている
自分ではわからない
が
いつの間にか眉間に力がこもっていた
細い視界
酷い顔
ふと
彼の柔い手が
頬を包む
したから覗き込む瞳は
私の影によって
赤紫色と翡翠色をぼやけて映す
彼の腰に回している手が汗ばむ
体温が上がる
静かな夜に不似合いな程、心が揺れる
咄嗟に
頬に触れる手を掴んだ
「私は」
思った以上に大きな声が出る
驚いた顔の彼
「…君に、悲しい顔をしてほしくない。けれど…どうしたらよいのかわからないんだ」
教えてほしい
どうしたら君は、笑ってくれる？
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Last(プロフ) - いおさん» ありがとうございます。詩的な表現に気を遣っていたのですが、そう言っていただけてとてもうれしいです。完結までよろしくお願いします。 (2019年6月1日 21時) (
レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
いお(プロフ) - 素晴らしすぎる作品ですね…!続きが気になり過ぎて堪らないです!!文章も綺麗で、何から何まで素敵な作品です…!!これからも頑張ってください…!! (2019年5月28日 23時) (レス) id: 1d7aa46e15 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 彩華さん» ありがとうございます。お話も割と終盤ですが今後も楽しんでいただけるよう頑張ります。 (2019年5月26日 15時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - しんどい…好き…めっちゃ心抉られるくらいキュンときます…俺的にはどストライクすぎます。作者さん好きです（） (2019年5月25日 0時) (レス) id: 3d53cc1cd6 (このIDを非表示/違反報告)
Last(プロフ) - 腐女神さん» ありがとうございます。完結まであとわずかですが今後とも気長に待っていただけると幸いです。 (2019年5月19日 2時) (レス) id: ec5508f4a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Last | 作成日時：2019年4月27日 1時
