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俺も未だに説教まがいのことはするけど、半分諦めてるし。懲りずにずっとあの生き方を矯正させようとしてるのはらだおくんぐらいかな。
「黄金世代の中で飛び抜けて過保護なのってらだお兄さんだと思うんだけど、それって何かその事件と関係あるのかな…」
「…らだおくんなんだよね、最後にAと無線で話したの」
「え、グレ食らう前にってことですか?」
「そう、らだおくんはその時も空にいて、サーマルで状況は把握してたからすぐに撤退するように声荒らげて指示飛ばしてたよ」
あえて口には出さないけど、あんなに必死に誰かの身を案じて声を荒らげるらだおくんはあの時が最初で最後。それぐらい彼にとってAが大切だってことは、あのとき無線にいた全員が知ってる。
「んん、Aさんは引かないよねぇ…」
「うん、しかもそのままAが二週間ぐらい眠り続けてたかららだおくんのメンタルにだいぶ効いたみたい」
「二週間!?そん、そんなことになったら私メンタルに効くどころじゃないっすよ!?」
「私も無理だぁ…二週間もAさんのあの笑顔見れないとかやだぁ…」
顔を青くして両手をばたつかせるひのらんも、今にも泣き出しそうな顔をするなずぴも、心の底からAを慕ってる。だからこそあの無茶しがちな性格をなんとかしてやりたい気持ちはあれど、さっきも言った通り難しいしそれはきっと俺の役目じゃない。
「それって何が原因だったんですか?」
「眠り続けてた原因ってこと?」
「うん、だってこの街でそんな症例聞いたことあります?ひのらん先輩」
「無い無い、初めて聞いたよ」
二人の言う通り、二週間も昏睡状態に陥った人間なんて多分この街ではAだけだと思う。鳥野さんもそう言ってたし、もちろん前例もなかった。
「原因は不明、外傷は治療済みで脳にも異常は見られないのに"何故かは分からないけどただ目を覚まさない"っていう事実だけが目の前に転がってる感じ」
「っめちゃくちゃ辛いじゃないっすかぁ」
「無理ぃ… Aさんがそんなことになったらほんとに耐えられないぃ」
二人の反応は正しい。今思い出しても本当に辛かったし気が気じゃなかったし、でも俺以上に辛そうならだおくんがいたから。彼がAの病室に通えるように、俺も皇帝も先輩たちも死ぬ気で業務をこなしてたなぁ。懐かしい。

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作者名:tori | 作成日時:2024年10月7日 21時