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ももみ先生に治療してもらったお陰で痛みはだいぶマシになったけど、ガーゼで覆い隠せないほどの痛々しい内出血の痣がどうしたって気分を憂鬱にさせる。唯一の救いはこれを治療してくれた時のももみ先生がめちゃくちゃ心配してくれた上に頭を撫でてくれたこと。役得である。
更衣室の姿見の前でガーゼをもう少し大きいものに変えるべきか、もしくはいっそのこと顔を覆うマスクでもつけるべきか真剣に考え始めて10分。これさすがに誰にも突っ込まれずに今日を終えるのは不可能だよなぁ、やだなぁ。いつも着ているはずの制服も心做しか重く感じる。
「うわ…」
『第一声がそれはさすがにひどい』
「あー、ごめん…おはよ」
『おはよらだお』
制服に着替えて更衣室を出た瞬間鉢合わせたらだおに内心で思わず舌打ちをしてしまった。わたしもしかして神様に見放されてる?なんて馬鹿な思考を振り払って"平常心平常心"と頭の中で何度も繰り返す。
「A、どしたそれ」
『昨日帰りに心無きに殴られた』
「は?…そんなことある?」
『いやわたしが聞きたい、そんなことある?』
「…痛そー」
寄りにもよって一発目に顔を合わせるのがらだおって、さすがにツイて無さすぎる。この男はあらゆる分野において油断出来ない。頭のてっぺんからつま先まで意識を巡らせて、全力でいつも通りを装うことに全神経を使う。なんで出勤前にこんなにも神経すり減らさなきゃいけないんです?
『痛いけど出勤前にももみ先生に治療してもらったからすぐ治るよ』
「…本当に心無きにやられた?」
『うん、後で市長にも報告しに行く予定』
「へぇ…?」
おいなんだその反応。事前にありとあらゆる想定をしていたお陰で声は震えて無いし、嘘自体には無理があるとしても矛盾は無いはず。そんな、まるで疑っているかのような反応は想定外なのでやめていただきたい。早急に話題を、なにか別の話題を振らなくては。

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作者名:tori | 作成日時:2024年10月7日 21時