能力荘の非凡な毎日 (ページ18)

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空腹も忘れて【神水流白】ページ18

慣れているはずの飢餓感とも言えるべき空腹感を感じたのは、学校帰り。

彼女―――神水流(かみづる) 白(つくも)は一応高校3年生であり、今日彼女の通う学校はたまたま午前あがりであった。

にも関わらず、なぜ帰路に着いているのが現在、15時半であるのか。

それは、今が4月であることに起因する。

4月、進級や入学の季節。

今年3年生へ進級した白は、クラスの親睦会へと連れ出されていたのだ。

しかもカラオケ、あの無駄に食べ物の値段が高いところ。

某カラオケ店とは違い、なんと食べ物の持ち込みが禁止だったのだ。なんて気が利かない店だ。

体調が悪いというのを口実に抜け出し、近所に住む知人から聞いた今日限定のオリジナルビッグパフェを食べに行ったものの、既に時は遅し。

確か78年前にもあったな、こんなこと。

帰り道の立派な桜並木の中で、白は静かにため息をついた。

「…お腹すいた～…皆歌うばっかりで食べ物なんて注文してくれないし～…」

地獄かと思った、と口にするところで視界の端に映ったのは―――

「っ！コンビニ…！」

急いで駆け込み、かごにカップラーメンをはじめとした高カロリーでおいしい食べ物を積んでいく。

ほとんどカップラーメンだが。

行きつけのコンビニでもあり、対応してくれるのは決まって顔見知りの女性店員なので、量に驚かれることなくすんなりとレジを済ませた。

ちょうど隣のレジも会計が終わったらしい。

奥のレジにいたため、出入り口に目を向けると必然的にその人が目に入る。

その後ろ姿に見覚えがあって、思わず声をかける。

「朱司ちゃ～ん！」

彼女はこちらを振り向き、並んで会話をする。

近くの親子を見ては時々寂しそうな、悲しそうな、複雑な顔をする朱司をショッピングに誘う。

オレンジ色の空がちらつくが、それは気にしないで2人ではしゃぐように走る。

お揃いのクマのキーホルダーを買って、一緒に食事をして、可愛い洋服を見て。

満足して片時雨館へ戻る頃にはもう真っ暗。なんせもう20時半を回ったのだ。

「ただいま～！」

「ただいま帰りました…！」

「…誰もいないね～。皆部屋にいるのかな～？」

「私が出る時は新しい入居者らしき人がいたんだけど…」

「じゃあ皆その子のとこにいるのかな～？ずる～いっ！私も行こーっと」

「あっ、ツクさん…っ！…って、はや…！？」

辿り着く前に空腹で倒れてしまうのは、あと数分後のことである…。