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目の前が明るくなっていることに気づいたのは、結構あと。
これって、もしかして朝？
「A〜！」
元太が私を呼ぶ声で目が覚める。
目を開けると、部屋の電気がついていて、
夜だった、ということに気づく。
隣に座っている元太に聞くと、
私はどうやらあの後、暗い部屋の中、ソファにうずくまって寝ていたらしい。
『ごめん元太。寝てた。』
「全然いいよ。
てか、俺も急な仕事で遅くなっちゃったし。」
『……ご飯作らないと、ね。』
立ち上がろうとすると、
手を引っ張られ、無理やりソファに座らされる。
「ご飯はいいから。俺が作る。」
『でも疲れて帰ってきたのに……』
「疲れてるのは、Aのほうでしょ？」
元太の顔をみると、凄く心配した顔をしていて、
見抜かれてたんだなぁ、なんてちょっとショックだった。
なるべく元太には心配かけないようにいようと思っていたのに。
下を向いていたら、両手で顔を元太の方に向かせられる。
「俺の目、見て。」
目を合わせないようにしていた私に言い聞かせるように、元太は言った。
今は目を合わせたくなかった。
だって、元太を見たら泣いちゃいそうだったから。
「あぁ、泣かないで。
今日辛かった？」
元太は溢れてくる涙を優しく指で拭って、そっと抱きしめてくれた。
ずっと欲しかった温もりがそこにあって、
モヤモヤしていた心がどんどん溶かされていく。
『辛かった。
…辛かったのに、いないんだもん。』
「ごめん！本当にそれはマジごめん。」
首に顔を埋めて泣いていると、
元太が背中をトントン、と子供をあやすように叩いてくれた。
そこから会話はなくて、私の感情が落ち着くまで、ずっと抱きしめて待ってくれた。
元太は、本当にいい彼氏だなぁ、と改めて思う。
『ありがとう。
気持ち、落ち着いた。』
体を離そうとすると、元太の腕がそれを阻止して中々腕の中から出られない。
「やっぱり離したくない。」
『え？』
「もうちょいこのまま。」
長いよ〜、って私がいつもはここで嫌がるんだけど、
何となく今日は許してもいいかな、なんて。
『今日だけ、ね。』
「ふふ、ありがとう。」
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作者名：菜緒 | 作成日時：2020年11月22日 15時
