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『如恵留くん、水飲んでね〜。』
「ん、はーい。」
はーい、と言いながらも掴んだのはマグカップではなく、私の腕。
クイッと引っ張られると、いつの間にか如恵留くんの膝の上で座るような姿勢になる。
腕は腰に巻かれ、私の逃げ道はそうそうになくなった。
『ねぇ、水……っ、』
「俺は水よりAとはなしたいの。」
ムニッと頬をつねられる。
可愛い、と思ってしまった私の負けだ。
こんな距離が近いこと、なかなかない。
…いっそのこと、いつも嫉妬深い如恵留くんにも今なら何でも聞ける気がしてきた。
『……さっきの阿部さん男の人だけど、大丈夫なの？』
そう聞くと、ポケッとした顔で返してきた。
「だって阿部さん既婚者だもん。」
『へー！……そりゃそうか。』
あんな余裕のある人、既婚者じゃないわけないか。
「あ、阿部さんのこと考えてたでしょ。」
『へ？』
「さっきもさ、阿部さんに見とれちゃって。
俺の事なんて頭の隅の隅にしかなかったじゃん。」
全くそのつもりは無いのに、如恵留くんはムスッとしている。
何だか幼稚園生に戻ったみたい。
『そんなことない！
心配だから如恵留くんを迎えに行ったんだよ？』
「ほんと？」
『如恵留くんは知ってるでしょ？
私が嘘つけないこと。』
「……ふふ、そっかぁ。」
私の顔を満足そうに見つめると、チュッと音を立てながら唇に触れた。
顔を離したあとも、幸せそうに私を見つめてるから、段々こっちが恥ずかしくなってくる。
目線を外しても、ダメって真正面向かされるし、逃げ場はないしで、多分今私の顔は真っ赤になっていると思う。
「甘いね。」
『うん、甘い。』
……このまま、溺れちゃいたい。
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作者名：菜緒 | 作成日時：2020年11月22日 15時
