幸せな時間 Ryuya.S ページ16
『寒いね〜。』
「手繋ごっか。」
『うん、そうする。』
マスクをして、冬完全装備で久しぶりに2人でお出かけ。
古い町並みを2人で歩いていると、龍也はさらっと手を繋いでくれた。
『…なんか、今のキュンってきた。』
「どこらへんが？」
『…サラって、手繋いでくれたとこ。
女子はそういうの、嬉しいんだよ。』
「へー、そうなんだ。」
本当に知らないらしい。
無自覚にモテている龍也には、本当に困る。
でも無自覚にかっこいいとこもあるから、彼女でいられることは本当に幸せだ。
「そういえばAって変わったよね。」
『えー、そうかな？』
「だって、昔は手繋ごうよって言っても恥ずかしがってしてくれなかったじゃん。」
『それは……、』
私はずっと龍也と付き合うまで、人前でカップルらしいことをするのが苦手だった。
手を繋ぐとか、キスなんてもってのほか。
でも、龍也は優しくて、私の事をすごく大切にくれて。
だから私も少しづつだけど慣れたし、龍也が心配な顔せず、笑顔でいてくれることが増えた気がする。
『龍也の手が、温かいって気づいた……から？』
「ふふ、何それ。
なんか可愛い。」
龍也の声で言われる”可愛い”は、何回も聞いてても慣れないし、もどかしい。
ふわふわとしたこの空気感が、ずっと続けばいいのになぁって思ってしまう。
「ねぇ、俺の手ってそんな温かい？」
『うん、あった……っ、』
龍也の顔を見ようとした時、顔が近づいて頬に何かが当たる感触。
『…ちょ、……え？』
マスク越しにキス、した？
……ここ、街中だよ？
確かに人は少ないけれど。
心臓が鳴り止まないなか、龍也を見るとひたすらニヤニヤしているのがマスク越しから伝わってくる。
もー、絶対わざとやってるじゃん。
「A、やっぱり変わってないね。」
『か、変わったもん！』
そしたら、えー？って可愛い顔で覗き込まれて、またドギマギして。
照れた代わりに、
繋がれた手を、もう一度強く握った。
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作者名：菜緒 | 作成日時：2020年11月22日 15時
