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『これが最後のドアだぜ』
Aiの言葉と同時に遊作はドアを開ける。そこは先程と違い、暗闇だけの部屋ではなく、モニターの明かりが辺りを照らしていた。そんなブルーライトを浴び、椅子に座ったままの女性。見るからにLINK VRAINSにログイン中の彼女にAiはビンゴ!と声を上げた。遊作はインカムで現状を草薙に説明しているらしく、その部屋の観察とともに大人しく佇んでいれば、数分も経たずに草薙が部屋に飛び込んできた。
「遊作、A!」
「草薙さん、あれを見てくれ」
必然と言葉少なになるAを他所に、遊作は草薙と話を続ける。目の前のLINK VRAINSを監視しているだろうモニターには沢山のウィンドウが開き出されていて、その中の一つ。病院内の様子に遊作は目をつけた。アナザー被害で倒れたはずだった被害者たちが次々と目を覚まし、自身の状況を確認している。
「これは…アナザー患者が次々と回復している」
「除去プログラムが起動したんだ」
デュエルを終え、バイラと彼女が話す姿。それはブルーエンジェルが勝ったことを意味する。ブルーエンジェルに心を変えられた、と話すバイラ。Aはそれに途端に胸が苦しくなった。ブルーエンジェルのことを応援していたはずなのに、何故かそれを喜べない自分がいる。バイラはこの後、ログアウトどころか本体の意識さえ戻るかどうか…。きっとログアウトしないだろう、Aは彼女の口調からそれを読み取った。今まで証拠隠滅のため、負けたアカウントはデリートさせられてきているのだ。彼女もまた然り、だろう。
話を終えたバイラを見かね、遊作が口を開く。どうやら、ログアウトした現実の彼女から情報を引き出すつもりらしい。今までもそうしてきた分、Aも彼らがそういうだろうと予想していた。それにAiもノリノリだ。Aは一人、目を逸らす。
今の自分は整理がついていない、ハノイの騎士についての情報を聞き出すにしても、何にしても。自分は足を引っ張るだろう。
それこそ、リアルで目覚めた彼女に、私は。私は……
Aにとって、この部屋に燻る匂いが、何故かとても懐かしいものに思えて仕方なかった。
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遊真 - これから主人公がどうなっていくのかが凄く気になります!これからも頑張ってください! (2019年8月14日 16時) (レス) id: 70b9e10207 (このIDを非表示/違反報告)
リナ - しゅりんぷさんの作品、早く読みたいです! (2019年8月6日 23時) (レス) id: cfdd277789 (このIDを非表示/違反報告)
篝月(プロフ) - 初めから読んだので、続きが凄く気になります! (2019年5月24日 23時) (レス) id: 7982b0814b (このIDを非表示/違反報告)
しゅりんぷ(プロフ) - 白哉さん» コメントありがとうございます。ソウルバーナーいいですよね。いつか二人も出せるようにしたいなとは思っております。それまでどうかこの小説とお付き合い願えたら嬉しいです。 (2019年4月1日 1時) (レス) id: a80e55b6ef (このIDを非表示/違反報告)
白哉 - できたら穂村尊とフレイム(ソウルバーナー)を出してほしいです。 (2019年1月20日 17時) (レス) id: 8418d83dca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゅりんぷ | 作成日時:2017年12月13日 0時