傷口に愛を ページ13
とんとん、持った書類を整え、Aは生徒会室で一人、ため息をついた。あれ以来、二人には会っていない。連絡も取らず、自分自身に生徒会の仕事が忙しいと嘘をついて、仕事をする。生徒会の仕事なんてほとんどないに等しい。Aは書類を机の片隅に投げた。
こうして会わないのようにしているのは、自分に後ろめたさがあるからだ。
写真のことは勿論、遊作に隠し事をしたことにも。私の事を知った時の遊作の反応が怖い。Aは片腕で目を抑えた。遊作に嫌われたくない、知られて疑われたくない。考えるだけで熱くなる目頭を必死に腕で隠し、上を向く。
一人、思いに耽るAを差し置き、生徒会室のドアを叩く音がする。開いてます、その言葉にドアが開き、生徒が一人入ってきた。逆光で顔が見えない、だがそれもドアが閉まると同時に、解決する。Aは震える声で小さく彼の名を呼んだ。
「……要件をどうぞ。生徒会の誰かに御用でしたら、その者を呼び戻しますが」
「A、」
「……私たち、初対面ですよね。軽々しく、」
A!!、遊作が彼女を追い詰め、その手を握る。Aは逃げようにも後ろは窓で、限界まで後ずさるも簡単に捕えられた。Aは遊作の顔が見れず、俯いてその場で立ち止まる。
「どうして来なかった」
「…生徒会、忙しくて」
「仕事は全て終え、持て余していると聞いた。何の仕事をしてたんだ」
「…書類整理」
「俺達のところには来ないで、一週間もか?」
遊作の反論に押し負け、黙るしかないA。遊作は、そのまま畳み掛けよう、と言葉をつなげる。彼は、Aが逃げず、絶対に話を聞いてくれるタイミングを探していた。家に押し掛け居留守を使われず、道ですれ違っても絶対に走って逃げられないタイミング。それが正しく生徒会長時のAだった。Aはこの椅子に腰掛ける以上、自分からは逃げられない。一、生徒が訪ねてきたここでは。不意にAの手が震える。
「俺達に何か不備があったか」
「なっ!そんなわけない!!」
「じゃあ、嫌いにでも」
「なるわけないでしょ!!なるわけ、ない……」
好きだからこんなに悩んでるのに。思ったことは口に出さず、唇を噛み締め涙を流す。そんなAの涙を人差し指で拭った遊作は困ったように眉を下げた。
「……遊作は、私の過去がハノイの関係者だったと言ったら、どうする?」
冗談じみた言葉で泣きながら声を震わすA。遊作が喉を鳴らして唾を飲み込んだ。
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遊真 - これから主人公がどうなっていくのかが凄く気になります!これからも頑張ってください! (2019年8月14日 16時) (レス) id: 70b9e10207 (このIDを非表示/違反報告)
リナ - しゅりんぷさんの作品、早く読みたいです! (2019年8月6日 23時) (レス) id: cfdd277789 (このIDを非表示/違反報告)
篝月(プロフ) - 初めから読んだので、続きが凄く気になります! (2019年5月24日 23時) (レス) id: 7982b0814b (このIDを非表示/違反報告)
しゅりんぷ(プロフ) - 白哉さん» コメントありがとうございます。ソウルバーナーいいですよね。いつか二人も出せるようにしたいなとは思っております。それまでどうかこの小説とお付き合い願えたら嬉しいです。 (2019年4月1日 1時) (レス) id: a80e55b6ef (このIDを非表示/違反報告)
白哉 - できたら穂村尊とフレイム(ソウルバーナー)を出してほしいです。 (2019年1月20日 17時) (レス) id: 8418d83dca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゅりんぷ | 作成日時:2017年12月13日 0時