【遊戯王VRAINS】空白アルビレオ２【藤木遊作】

母の眠る地 ページ9

漸くマザーバンクが見えてきた頃、燕青とブルーエンジェルは久々の地面へと足をつけ、歩く。どうやら入口は真正面のようで、飛び出して入っていこうとしたブルーエンジェルの手を引き、物陰へと引っ張った。

｢！？｣

｢しっ…、静かに。先客がいる｣

それがPlay makerだと言うことは燕青にもすぐに分かった。けれど、話し声と物音から他にもう何人か。燕青はブルーエンジェルの口を手で塞ぎ、自分の胸元へと体を寄せた。

息を呑む音が聞こえる。それは勿論、ブルーエンジェルからで。燕青はそれに気づかないまま様子を物陰から疑っている。近すぎる距離と、口元にあたる彼の手に彼女は大きく心臓を高鳴らせ、顔を真っ赤に染め上げた。

どうしよう、なんて考えながら後ろから抱きつかれているような状況に何も言えずに固まる。気になるかもしれない人にこんなに近づかれて、正気でいられるわけがない。ぐるぐると頭が回ってオーバヒートしそう、ブルーエンジェルはきゅっと目を閉じた。

｢……財前晃とゴーストガール？｣

燕青がぼそりと呟いて、手を顎に当てる。Play makerはどうやら、これからデュエルを始めるらしく、燕青はミュートにしていた指示器を軽くいじってオンにした。ゴーストガールがそこにいるということ、しくった自分達が騒ぎを起こしてしまったこの状況。どうやら、囮に使われたらしいというのは燕青も一目でわかった。

話し声がちらりと聞こえれば、二人はこっそり壁から覗き込み、二人のデュエルを見届ける。ブルーエンジェルは自分の兄の知らない真実などが多々明かされていくことに、驚きを隠せないようで、心配そうに財前を見つめた。

デュエルが始まるにつれて、燕青はふと何かを考える。ソルテクノロジー社が自分達の事件と関係していることに、何故無理やり首を突っ込んでくるのか。自分の妹を守りたいならそれでいいのに、わざわざ身を削るようなことを。彼はもしかしたら、Play makerの正体に少し気づき始めている…？燕青が唇をぐっと噛む。

始まったばかりのPlay makerと財前晃のデュエルを燕青は祈るように見つめた。

どうか、勝利を我が主に。

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