哀しいkiss 30 ページ47
太輔side
Aに出逢った日の事は今でもはっきり覚えてる
その日は、玉の誕生日だった
撮影と撮影の僅かな時間
渉と表参道のショップに入った後
渉は、豚の貯金箱…
俺は…
プレゼントを選んだ後、ふらっと入った
フラワーショップ
南青山って場所柄か、他の花屋で見たことのない
木や葉や花が並ぶ
渉「花も欲しいね、誕生日だし…」
太「ね、玉…花好きそうだし…」
渉「でも、あれかね
弟とかプレゼントしてくれんのかね？」
そうだ、確か玉の弟はフラワーアレンジメント
やってんだった
じゃあ、いらないか
渉「それにまだ、今日長いしね」
撮影は夜までかかりそうだ
フラワーアレンジメントにしたって、花束にしたって場所をとるし、傷んじゃうな
花は…諦めるか
そう思った時だった
「何かお探しですか？」
ショートボブのサラサラの髪を揺らして
俺の前に現れた女性
小柄で細くて…化粧っけのない幼い顔が
遠慮がちに俺に声をかけた
？
誰
店の人？
.
.
いや…
学生のバイトさん？
お洒落で、ハイセンスでスマートな街、南青山
なんてこの場所に不似合いな女の子なんだろう
それがAの第一印象だった
俺はその女の子を上から下まで舐…めるように
見つめた
「…あの…」
渉「太輔！見過ぎ！」
「…な、にか…」
その女の子は、俺を見返すと
もう既に涙でいっぱいの瞳で、聞いた
「…あの…何かついてますか…私…」
見上げた瞳に張った水の膜
くりんとカールした睫毛についた水滴
垢抜けない幼い女の子…
そんな君に、俺が一目惚れした瞬間だった
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作者名：トウコ
| 作成日時：2019年5月25日 18時
