哀しいkiss 4

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裕太side

裕「A？」



「…ん？」


左手に味噌汁の茶碗を持ったAが、俺の方を
振り向く






裕「もしかして…」






「…ん、何？」







裕「思い出したの？」



「…？」






「…何を…？」








裕「……」






「…ん？」

心配そうに覗き込む瞳が、微かに曇ると首を横に振った





「…何も…思い出せないの…」




コトンとテーブルに置かれた茶碗


「昨夜は、裕太の腕の中でぐっすり眠っちゃって…
何にも思い出せなかった…」






裕「そ、か…」





裕「よく眠れたんだね…」





「…だから、早く目が覚めちゃって…」






「…玉森さんに協力してもらったのに、ね」






裕「ううん、全然…全然、ゆっくりでいいよ」



いや、寧ろ….思い出さなくていい
何も思い出さなくていい
ガヤを愛してた日々、ガヤへの想い
全部、全部封印してしまえばいい





「…玉森さん？」






裕「ごめん、朝から…Aを急かすような事…」







「…ううん、全然…」







裕「…焦らないで、」







「うん、でも…」






でも、何？

やっぱり早くガヤの事思い出したいの？
好きだった人の事を潜在的に欲してんの？





裕「？」






「お店に行きたいの…」





あ…店？






「ずっと休んでるから…迷惑かけてるし…」



そうだ、ガヤが店の前で倒れてから
Aはずっと店を休んでる







あんなにあの仕事が好きだった

人見知りなAが、頑張ってた場所に
戻りたいよね







「お花達に会いたい…」

そう言って窓辺の観葉植物を愛でたA





「おっきくなったね」




「旅人の木も…」






裕「うん、笑」







裕「お仕事行っておいでよ、今日から…」






「…え、」





裕「ほら、ここに流行りのスカーフを巻けば
首元は隠れるし…」






「でも、いいの？」






裕「え？」





「…私、この部屋からでていいの？」







裕「何で、そんなこと…」






「だって…」


そっか、ガヤが部屋から出るなって言ってたから…








裕「いいよ、全然…俺は…」







「？」






裕「仕事…行っておいでよ？」





その方がAは幸せだと思う
笑顔でいられると思う


俺の幸せは…
Aが、笑顔でいること






「ほんとにいいの？」






裕「その代わり…必ずうちに帰って来てね」





裕「いなくならないでね…」






「…ん、」







裕「約束して…」

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