哀しいkiss 4

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太輔side

もう少しで、取り返しのつかない事を
してしまう所だった





俺は、Aと玉が出て行った寝室で
自分自身を呪って身体が震えた





自分の中にあるエゴと底知れない独占欲
それは、Aへの愛ゆえ、そう思ってきた
いや、そう思おうとしてきた



でも、違ったんだ




俺は…どこかが壊れてる






.







.







.







全て、気づいていた


あの花屋でAの存在を知った時から




玉が、彼女を好きなこと




人見知りな玉が、拙い言葉と行動で彼女を
愛し、慈しんでいるのはわかっていた





わかっていて…
俺は、彼女に告白して彼女を自分のものにした


あの日、彼女が怪我をしなければ
君はきっと玉の彼女になっていただろう





優しく、奥手な玉に先手を打つようにして
俺は…彼女を自分のものにした
そうしなければ、いつかは玉のものになってしまうと思ったから






でも






.







.







.







.









結局、運命は変えられななかった



玉のAへの想いは、俺が思うよりずっとずっと
深かった







雪が舞ったあの日の夜




玄関ドアを開けた俺を迎えたのは
いつものオーガニックの香りを纏ったAじゃなかった


一瞬で、誰のものと分かるほど身近にいる人間の
香水の香り





その男の香りを纏ったAが、俺に許しを乞う



たった一度の過ちを。


無理矢理だったんだろ？
拒めなかったんだろ？
本当は、嫌だったんだよな？






その問いかけに
Aは答えなかった






許すつもりだった、Aがその時YESと言えば



嫌だった、無理矢理だった、拒めなかったの
と言えば…全然許すつもりだった





でも…君は…







.







.






.







声を押し殺して泣くAの姿に
その肩を抱く男…玉が、浮かんだ





玉に抱かれ…玉の香りを纏い…
玉の肩に、背中に手を回すAが見えた






罰だと思った

玉のAへの想いを知りながら
その目を盗んで彼女に告白し、自分のものにした罰







平和主義で、何でも譲ってしまう玉を
そこまで追い詰めた俺への罰






だから

諦めようと思った






Aを玉に託して
全て忘れて諦めようと思った





必死に…






.







.







.






半年間、玉の姿にはいつもAが重なった
玉を通してAを見ていた





忘れなきゃ…諦めなきゃ…そう思い続けていた


俺の隣にAがいた時、
玉がそうだったように…。

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