CHAPTER 02 無意味な殺人は無意味な殺人を呼ぶ 学級裁判後編 ページ33
「はあぁぁぁ〜…」
しんとした裁判場に、大先生の深い溜息だけが響いて残った。
その長い白衣を退けてズボンのポケットに手を入れた大先生は、長い間を持って漸く口を開く。
「ちな俺は殺してない」
「その割には随分と説得力のない溜息やったな」
「溜息やなくて、深呼吸な」
どう見ても深呼吸には見えなかったが。
そして大先生は頭をかきながら、ぎろりと睨むように私を見た。
物柔らかな大先生からは想像もできないような暗い目に、私は思わず肩を揺らす。
「トントンの時はどうやらまぐれやったみたいやな、Aちゃん」
「…大先生は犯人じゃないって言いたいの？」
まだ何処か余裕が残る大先生に、私は胸騒ぎを感じてしまいそうになる。
そう尋ねると彼は「もち、誰でもそう答えるやろ」と言った。
「じゃあ、大先生が犯人じゃないって証拠は？」
声が低くなっていく大先生に恐る恐るそう尋ねると、彼はまた「はあぁ〜…」と深い溜息をついた。
その溜息が、私に対しての呆れを表していることは聞かなくとも分かる。
「Aちゃんは勘違いしてるみたいやから教えといてあげるけど、確かに俺が犯人じゃない証拠はない」
「勘、違い…？」
「でもな、俺が犯人って証拠もないんやで」
大先生の一言で、皆が揺らぎそうになっているのが分かった。
実は犯人は他にいるんじゃないかと言う可能性に。
彼が、皆が、何と言おうとひとらんくんを殺した犯人は大先生で間違いない。
私一人だけがそんな確信を持って此処に立っている。
私のためでも皆のためでもない、死んだひとらんくんのために私は真実を暴く。
「Aちゃんの推理を否定するわけじゃない、ただその犯人が俺ってのはこじつけが過ぎん？」
大先生は私を見ているはずなのに、目の前の私ではなく見ている皆に語るような口調だった。
「白い人影だったから俺が犯人って、まだ決まってないやん。犯人が白いテーブルクロスでも被ってた可能性だって捨てきれんし」
「…でも犯人が大先生なら、殺されそうになったとき咄嗟に超高校級の臨床心理士の研究教室に逃げ込んだのも納得がいくよね」
冷たい声色の大先生の気迫に怯みそうになりながらも、何とかそう返す。
大先生の言っていることは合っているようで、そうではない。
彼の言葉は所詮、自分を守るための出任せだ。
CHAPTER 02 無意味な殺人は無意味な殺人を呼ぶ 学級裁判後編→←CHAPTER 02 無意味な殺人は無意味な殺人を呼ぶ 学級裁判後編
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 149人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
わたうさ@火星人☆(プロフ) - 名無しくんさん» ご愁傷様です…(´ｰ｀;) (2019年9月23日 12時) (
レス) id: af7c01dafc (このIDを非表示/違反報告)
名無しくん - 推しが…死にましたぁ…(°▽°) (2019年9月23日 11時) (レス) id: f915d9c3de (このIDを非表示/違反報告)
わたうさ@火星人☆(プロフ) - 閑さん» はじめまして、いつも閲覧有難うございます！私も大好きで、d!様と原作者様には感謝しかないです…かたつむり更新ですが自分のペースで頑張ります！有難うございます！ (2018年12月28日 14時) (レス) id: af7c01dafc (このIDを非表示/違反報告)
閑 - はじめまして、いつも楽しく見させて頂いてます! d!もダンロンも大好きなので主さんには本当に感謝しかないです…これからも更新など頑張ってください (2018年12月28日 14時) (レス) id: 8c1224d0db (このIDを非表示/違反報告)
わたうさ@火星人☆(プロフ) - 蒼空さん» ひえええ！両方推しだったなんて！！今後名前だけでも沢山出します！！これからも閲覧お願いします！コメント有難うございます！ (2018年12月15日 17時) (レス) id: af7c01dafc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
