32話,酸欠原因は紛れもない ページ32
「帰りたくない……」
もしこれが社会人だったなら今すぐ色っぽい展開になりそうなセリフだ。
ただ学生なので駄々をこねている子供にしかならないが。
「なんだよ。両親と何かあったのか?」
「んー……なんか、最近ここの駅でみんなと遊んでるだろ。
それが父さんにバレたらしくて、怒られたんだよ」
ここの駅というのは、この学園の最寄り駅であり俺の最寄り駅である駅だ。
「え、友達と遊んでるだけで怒られるの……!?」
……まあな。
絶句した様子のAに頷いてみせると、なにやら怪訝そうな顔をした。
……相変わらず、分かりやすい。
「厳しいっつってもさ……友達と遊ぶの禁止ってそりゃないだろ」
「ちゃんと言えよ? 元はと言えば、俺らが友達になった理由、お前のそれなんだからさ」
南と尾浜にそう言われて、俺は言葉に詰まる。
そんなところで救世主が現れ、言えなくても言えないんでしょ、と二人をたしなめた。
なんだか彼女には救われてばかりだな。
なんて思いつつ、俺は笑いながらその話を有耶無耶にすることしか出来なかった。
* * *
今日は父さんじゃなくて母さんが帰ってくる日だ。
……本当、生まれる場所くらい選ばせて欲しかった。
家族だから、失うことが出来ない。だから、苦しい。
失ってもいいものならば、今すぐ手放してやるのに。
家族となればそうもいかない。
そう、例えばAみたいな、暖かそうな家庭に生まれたかった。
面識こそないけれど、Aを見てると良い家庭で育てられたんだろうと思う。
……はあ。
どうしようもないことだと分かっているが、悩まずにはいられない。
そんな中で俺は家の扉を開く。
「ただいま」
「……おかえりなさい」
……一人よりは、いいな。
その程度か、大きなものなのか。
存在の価値は分からないけれど、返ってくる声があると、ただなんだか安心した。
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小桜(プロフ) - 勘右衛門とくっつくと思ってたらまさか……! ハッピーエンドっぽいけど何か悲しい…? でもストーリー凄く良かったです! (2022年9月15日 18時) (レス) @page50 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
竹林寺(プロフ) - でる太さん» いつまでも待ち続けます!頑張ってください! (2019年10月4日 2時) (レス) id: e33c68ca3b (このIDを非表示/違反報告)
でる太(プロフ) - 竹林寺さん» 感想ありがとうございます!新作については気長に待っていてくださると嬉しいです! (2019年10月3日 7時) (レス) id: c96608a168 (このIDを非表示/違反報告)
竹林寺(プロフ) - うおおおおおおお…切ない…何か勘右衛門可哀想になってきた…とっても面白かったです!新作ももしよければ作ってください!! (2019年10月3日 1時) (レス) id: e33c68ca3b (このIDを非表示/違反報告)
でる太(プロフ) - 空さん» 感想&応援ありがとうございます!かっこいい尾浜を目指しているのでとても嬉しいです (2019年8月11日 6時) (レス) id: c96608a168 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:でる太 | 作成日時:2019年7月16日 16時