25 ページ27
·
私は飼育小屋からの帰りで廊下を歩いていた。いやぁ、地面に足がつく事がこんなに新鮮だとは。
あの日はまだガラスくらいはすり抜けられたのに、あれからどんどんすり抜けることが出来なくなった。
物には触れるのに誰にもみられない。
これじゃあまるで、幽霊じゃなくて透明人間じゃないか。
『浮けなくなったらいよいよ幽霊感ゼロになっちゃうんだよなぁ…』
まだ浮けるから良いけども…。
これで疲労感出るようになったらもう肉体がある状態と同じだよなぁ、なんて事を考えながら廊下を歩いていると、少し前の扉が開いてトントンさんが出てきた。
「……寝たらあかん…まだ仕事が……」
相変わらずトントンさんの顔色は悪い。
なんなら顔色の良いトントンさんを見た記憶なんて一、二回しか無い。
大丈夫かな、なんて思いながら見ていると、廊下の端にあるミニテーブルにぶつかったトントンさん。そのテーブルには花瓶があり、ひとらんさんの育てた花が生けてあった。
花瓶が割れたらトントンさんが怪我するだろうし…いや、そもそもトントンさんを医務室に連れて行った方が良いのでは…？
そう思いトントンさんの方に歩いて行っていると、またトントンさんがミニテーブルにぶつかった。
『あっ、危ない…！』
ミニテーブルにぶつかったトントンさんはこけそうになり、体を起こそうとミニテーブルに手をかけるも失敗。
傾いたミニテーブルから花瓶が落ちそうになり、トントンさんは床に倒れそうになる。
このままだと確実にトントンさんに花瓶が当たるし、トントンさんは頭を打つだろう。石造りの堅い床で頭を打つのは相当痛いと思う。…わからないけど。
咄嗟に浮き、猛スピードでトントンさんと床の間に行く。花瓶より頭打つ方が危ないと思ったから。
『びゃっ』
パリン、と花瓶の割れた音がして、私の背中には重さが。
花瓶は少し離れているところに落ちていたので、ひとまず安心だ。
…悲鳴が“びゃっ”ってなんだ…自分でも驚くくらい変な声が出た。ロボロさんがここにいたらきっと笑い転げていただろう。
私も上にトントンさんが乗っていなければ笑い転げていた。
『カメラ……ロボロさん気付いて…』
力が絶望的に無い私にガタイのいいトントンさんを持ち上げるなんてできない。
…つまり、誰かの助けを待つしかないのだ。
だけど私の事が視えない人からしたらトントンさんが浮いているように見えるだろうし…。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 829人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
零音(プロフ) - 千菜さん» ありがとうございます！！よければこれからもこの作品をよろしくお願い致します！ (2020年10月21日 14時) (
レス) id: ac8575b88f (このIDを非表示/違反報告)
千菜(プロフ) - いつも楽しく読んでいます！この作品大好きです！これからも応援しています (2020年10月21日 11時) (レス) id: 36e14b459a (このIDを非表示/違反報告)
零音(プロフ) - 暇人な名無しさん» コメントありがとうございます！そうです！視えるタイプです…！！ (2020年10月18日 21時) (レス) id: ac8575b88f (このIDを非表示/違反報告)
暇人な名無し(プロフ) - snさんまさかの視えるタイプ...!?...でもまあ名前に神ってついてるぐらいだしちょっと納得？ (2020年10月18日 19時) (レス) id: d7b6c8461a (このIDを非表示/違反報告)
零音(プロフ) - 春さん» ありがとうございます！！更新頑張ります！！ (2020年10月16日 17時) (レス) id: ac8575b88f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：零音 | 作成日時：2020年9月15日 20時
