【アンソロ】特別寮のあれこれ。【歌い手】

「今はまだ」＊遼夢＿＿＿宇宙音 ページ5

【本編との直接的関係はございません】


髪型を変えたとき
新しい歌をあげたとき
何かあったとき

真っ先に、彼に会いたいと思うのは。思ってしまうのは――

――……罪なのだろうか。

＊

昔から、互いが互いの"大切"であり続けていた。そして同時に、"特別"でもあり続けた。

親友と呼べる人だって、いつでも支えになってくれる人だって、遼しかいなくて。もう家族同然――いや、下手したらそれ以上の大きさがある。

それだけ大事な彼を、私は、今

誰よりも傷付けている。


待ち合わせの改札前に、予定より早くついたとき。
私が20分早く行ったって既にアイツはいつも、自販機の側面にもたれて私を待っていて。一体いつからそこにいるのやら。

いつだってなんだって、私よりちょっぴり上手で。負けて悔しがる私を笑ってなだめて１から教えてくれて。


大好きだよ。誰よりも大事なの。
だからね――お願い。

このままでいたいの。

私の優しくて格好いいお兄ちゃんでいてよ、私の可愛い弟でいてよ。


ごめんね。
本当は、私が遼に対して懐いてる"好き"と、遼が私に懐いてる"好き"が違うことに気付いてるの。


好きだよ、遼。
だけど、だけどね。

やっぱり、私と遼の好きは違うみたいなの。

私のこの勝手なエゴイズムで、遼のその大事な気持ちを駄目にしちゃってるのも分かってる。

……私なんかを好きになるには、勿体ないくらい素敵な人なんだ。なんて。
端から見ればただの言い訳にしか聞こえないのだろうが、いたって真剣な――私の想い。


私に恋愛感情を抱かないで
でも私を嫌いにならないで

強欲で貪欲で、自分勝手で利己主義者もいいところな私は、やっぱり罪も深いらしい。


「――あ、A」


ほら、今日も
私より早くに来て、いつもの自販機にもたれiPhoneを撫でていた遼。

――あれ、なんか


「……髪染めた？」
「え、よう気付いたな」


見慣れた深く濃い茶髪の下に、ふわふわしたシルバーの髪が覗いてる。

……なんというか、こう


「相変わらずおしゃれだね」
「Aもやろ。そのピン可愛い」

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