6.さよならララバイ ページ8
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「A先輩、この間のケーキありがとうございます」
任務終わり、校内にもどって報告書を書こうと考えていると待っていたかのように柱の影から出てきたのは傑くんだった。
ニコニコ笑う彼はいつも爽やかだ。私も釣られて笑ってどういたしましてと声をかける。
「それと悟のことも。先輩が甘やかしてくれたおかげでだいぶ機嫌が治ってました」
「あーー、それね。いいよいいよ。大変だったけど……」
傑くんと喧嘩して不貞腐れた彼の機嫌を治すのには、完徹した挙句に、楽しみにしていた私の分までのケーキも食べられたがまぁ可愛い後輩のためになったのなら許そう。
昨晩は朝まで私の部屋で二人モンハンをやりまくり、ルンルンの機嫌で自分の部屋に帰っていた五条くんの目には全く疲れがなかった。
私は疲労困憊だったが……。
そのかわり『ここの店、月1でケーキバイキングやってんだぜ。俺の奢りでいいから今度行こうぜ、A』と言っていた。
なぜ彼がこの店に詳しいのかは置いておいて、素直にケーキバイキングは嬉しいから楽しみにしておこうと思う。
「悟は先輩のこと好きですからね」
「そうかなぁ。好かれた要素がわからないんだよねぇ」
「映画のチョイスのセンスが良かったんじゃないですか?先輩も悟も微妙な線の映画ついてくるし」
「微妙って……、ひどくない?」
好みは人それぞれだからよくないか。
面白そうにくつくつ笑う後輩になにも言えなくなって、2人で校舎のほうに歩く。
「でも、悟は本当に気に入った人としか絡みませんよ」
その傑くんの言葉が、胸にいつまでも残っていた。
――
―
「おい、こんな時間にどこ行くんだよ」
健全な子は眠るはずの、日付がもう直ぐ変わる12時ごろ。
明かりも最小限しかついていない暗い校舎を出ようとすると、後ろから声がかかった。
「……麓まで、DVDを返却しに行くんだけど」
「……」
返却期限は明日の朝までだ。だけど明日は授業がある。
返却ギリギリまで返さなかったのは、五条くんとの一緒に見るという約束を守るためだったのだが、、、彼は気がついていたのだろうか。
「3分待ってろ」
それだけ言い残して、彼は寮の方へ走り去っていく。
言葉通り帰ってきた彼は息が切れていて、上着が一枚と手には財布が握られていた。
「女だけで行こうとするな。せめて俺か傑に声かけてもいいだろ」
この後輩は優しすぎて、怒られているのに嬉しくて笑ってしまった。
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かるうら(プロフ) - 50話分しかなかったはずなのに、今までにないくらいの重量感で恐れ入りました。なんだか第5章くらいまで読んだ気分です。2章に行って参ります! (2020年8月3日 21時) (レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
サイコロ - 最の高だ…推しが絡んでる… (2020年3月19日 16時) (レス) id: d3e3d1ba1a (このIDを非表示/違反報告)
さとう - とても面白いです!応援してます! (2020年3月9日 19時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - 吉田さん» いいえ!神様は芥見下々先生です!!!でも、そう思ってくださり嬉しいです (2020年3月6日 22時) (レス) id: b5f5114d16 (このIDを非表示/違反報告)
吉田(プロフ) - 作者様は神でしょうか?( ˘ω˘ ) スヤァ… (2020年3月5日 1時) (レス) id: fb4495920c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱鷺 | 作成日時:2020年1月19日 23時