3.先輩と後輩 ページ5
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寮内の丑三時の談話室。
暗い部屋の中ソファーに膝を丸めて座ってじっとテレビを見ていた。
音量の押さえたテレビから流れるのは、寂れた山奥のホテルで冬を過ごす家族のホラー映画だ。
見ている人を煽る強弱のついたサウンド。起伏のあるストーリー。
序盤なのに、ホテルの不気味さが際立つ。
そこで、ぱちっと電気がついてはっと談話室の扉の方を見た。
もちろん停止ボタンを押すことも忘れない。
色素の抜けた細い白髪に、色の白い肌の長身の男の子。室内なのにかけたサングラスはこの寮では見たことがなくて、首を傾げた。
「……んーん??あぁ、五条くんか。どうしたのこんな夜中に」
サングラスで目の奥が見えないから、感情が窺えない。ただ、緩い動きに眠いのかなと思った。
「その前に、はじめまして?
はじめまして。2年の霜宮Aです。階級は一級だけど、戦闘能力を買われて一級になったわけじゃないからそんな強くないよ。よろしく」
「ふーん。Aはこんな時間に何してるの?」
無視しやがった。
しかもいきなり呼び捨てか。
まぁ、御三家の五条の子供だから仕方ないかと思い言葉を飲み込む。
噂ではその傲慢が許されるほど、彼は才能があるという。
呪術界では才能が全てだ。
いくら質のいい呪力を持っていても、出力するアンプとなる術式を持っていなければ生かせない。
そして、その術式は生まれながらに決まっているのだ。
「見ての通り映画見てたんだよ」
「こんな夜中に?」
「寝たくないの。それに映画好きだし。これ面白かったら五条くんに貸してあげるね」
傑君に頼まれたのに彼に渡す映画の精査を済ませていなかった。
まだ私が見ていない映画で面白かったら貸そうと思っていたのがいっぱいあって、それを見ていたところだ。
「………、いい。今見るから」
けれど何を思ったのか、五条くんはふらりとテレビ前のソファー。つまり私の横に腰掛ける。
びっくりして目を瞬かせても、こっちを見ようともしない。
「なに?早く再生してよ」
横顔から少しだけ覗ける目が、青いことに気が付いた。
飲み込まれそうな、鮮やかな空の色だった。
「明日起きれなくなるよ?」
「若いんだから完徹ぐらい余裕だろ」
「ふーん。私のせいにしないでね」
何も言わずに、再生ボタンじゃなくてリスタートのボタンを選んだ。
切り替わった画面はプロローグから始まる。
その日から。
なぜか私は、五条悟に懐かれることになる。
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かるうら(プロフ) - 50話分しかなかったはずなのに、今までにないくらいの重量感で恐れ入りました。なんだか第5章くらいまで読んだ気分です。2章に行って参ります! (2020年8月3日 21時) (レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
サイコロ - 最の高だ…推しが絡んでる… (2020年3月19日 16時) (レス) id: d3e3d1ba1a (このIDを非表示/違反報告)
さとう - とても面白いです!応援してます! (2020年3月9日 19時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - 吉田さん» いいえ!神様は芥見下々先生です!!!でも、そう思ってくださり嬉しいです (2020年3月6日 22時) (レス) id: b5f5114d16 (このIDを非表示/違反報告)
吉田(プロフ) - 作者様は神でしょうか?( ˘ω˘ ) スヤァ… (2020年3月5日 1時) (レス) id: fb4495920c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱鷺 | 作成日時:2020年1月19日 23時