36.さよならだけが人生だ ページ38
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無遠慮に職員室のドアを開けた3人を見て、歌姫先輩との会話を思い出した。
「馬鹿っ、、
貴方が、それで幸せだって笑って、死んでも!!私は貴方を想って哀しむのよ!!」
呪術師は死に近すぎた。
人の想いの醜体である呪いを祓い時には呪詛師を殺す。おはようと挨拶をした仲間が夜は死体となって帰ってくる。
そして基本、呪術師、霜宮Aは人でなしだ。
人でなしで、外道だから、遺された人の感情を考えない。
自分は置いていく側だと自覚しているから、
未来の安寧を願いこそするが、自分のいなくなったことで起こる可能性に目を向けない。
だってそれは、
生まれる前から決まっていたことだからだ。
「A先輩!!!」
最初に動いたのは硝子ちゃんだった。
一目でわかる重病人に、全力で抱きついてきて全力でそれを受け止める。
体の節々が悲鳴を上げる中、拒まなかったのはその目尻に涙が浮かんでいたからだ。
私の目が潤んだのは、体を蝕む激痛のせいだ。
「死んじゃったのかと、思いました」
「うん。……ごめんね」
「何も言わずに、居なくなって」
「うん、」
「連絡もなくて、、、探しても見つからなくて」
「…………、」
「直ぐに上は調査を打ち切って、先輩を見捨てたんです」
「そっか」
胸に顔を埋める硝子ちゃんの髪を無事な方の手で撫でながら、夜蛾先生の方へ視線を向けた。
困った顔をする私に、先生は首を振る。
「俺は何も話してないぞ。
‥…俺から話すのは筋違いだろ」
それは正当な気遣いなのか。
硝子ちゃんを慰めながら、何を話そうか迷った。でも、‥…今必要なのは多分弁解じゃない。
「ごめんね。
一人になりたかったの……」
「うん」
慕っていた人が死んだ。
同期が死んだ。
それらを処理するのに必要なのは時間だった。
この感情はきっと、
言葉になれば、薄れてしまう。
吐き出したら、忘れてしまう。
頭で考えて咀嚼して、忘れないように忘れないように大切にしまい込む時間が必要だった。
「でも、もう大丈夫だから」
私は逃げない。
この世界が辛くても、残酷でも、
呪術師である事を辞められない。
「私はいなくならないよ」
ほら。
また一つ、ウソをついた。
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かるうら(プロフ) - 50話分しかなかったはずなのに、今までにないくらいの重量感で恐れ入りました。なんだか第5章くらいまで読んだ気分です。2章に行って参ります! (2020年8月3日 21時) (レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
サイコロ - 最の高だ…推しが絡んでる… (2020年3月19日 16時) (レス) id: d3e3d1ba1a (このIDを非表示/違反報告)
さとう - とても面白いです!応援してます! (2020年3月9日 19時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - 吉田さん» いいえ!神様は芥見下々先生です!!!でも、そう思ってくださり嬉しいです (2020年3月6日 22時) (レス) id: b5f5114d16 (このIDを非表示/違反報告)
吉田(プロフ) - 作者様は神でしょうか?( ˘ω˘ ) スヤァ… (2020年3月5日 1時) (レス) id: fb4495920c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱鷺 | 作成日時:2020年1月19日 23時