32.その言葉をいつ迄も憶えていた ページ34
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「くしゅっ」
小さなくしゃみをして、体を丸ませる。
それがまぁ、手合わせの最中だったから相手をしていた傑がビクッと動きを止めた。
「やばい。寒い」
「動いてたら寒く無いですよ」
「あのね。君たちとは代謝が違うの。
極度の冷え性なの。ほらみて、手が悴んできた」
長物を持っていた手を傑の手にピタッと当てると、ひゅっと傑が縮こまった。
はははっ、と笑ってそのまま傑の温かい体温を奪ってやる。
「ちょっ、やめてください!」
「いーじゃん、いーじゃん。
このままだと棍棒取り落とす気がする」
今日の体術の授業は棍棒を使った授業だった。
またもや同級生に任務を置いてけぼりにされた私は、夜蛾先生にひきづられて下級生の相手をしていた。
「イチャイチャしてんじゃねぇよ、A」
「うわっ、悪意ある言い方」
隣で夜蛾先生と手合わせをしている悟が怒鳴って来たので、傑から離れて棍棒を下段に構える。
ツルッとした素材でできた棍棒は冷たい。
普段よりも力を込めてしっかりと握り込んだ。
カツンカツンと何度か音を立てて、傑と打ち合う。
踏ん張りが効かない手では傑の力を受け止められないのでくるくると手首を返していなしていく。
「まだ12月にも入ってないですよ?
去年の今頃はもっと寒かったじゃ無いですか」
「え、そうだっけ??」
「覚えてないんですか?
11月なのに本土に雪が降って、歴史的な大寒波だったんですけど」
「あーーー、あったあった。そんなことも?
私その時たぶん意識不明の重体人だったかも」
「………」
傑があからさまに顔をしかめる。
たぶんふる話題を間違えたとか思ってるんだろうと、苦笑した。
あの人が死に、私は意識不明の重体。
そしてその間日本に起こった大寒波。それはけして、偶然じゃ無い。
考え事をしていたら、あっさりと傑に負けた。
じんじんとする手をすぐにホッカイロであっためる。
「あーー、負けた負けた。
一年生のくせに強すぎない??」
傑とやる前に、私は悟に一回負けている。
これで連敗だ。
端っこのベンチで項垂れてると傑があったかい飲み物をくれた。
「A、本調子じゃねぇし。
そんなもんじゃね?」
「何言ってんの。
死ぬときは調子とか関係ないんだよ」
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かるうら(プロフ) - 50話分しかなかったはずなのに、今までにないくらいの重量感で恐れ入りました。なんだか第5章くらいまで読んだ気分です。2章に行って参ります! (2020年8月3日 21時) (レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
サイコロ - 最の高だ…推しが絡んでる… (2020年3月19日 16時) (レス) id: d3e3d1ba1a (このIDを非表示/違反報告)
さとう - とても面白いです!応援してます! (2020年3月9日 19時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - 吉田さん» いいえ!神様は芥見下々先生です!!!でも、そう思ってくださり嬉しいです (2020年3月6日 22時) (レス) id: b5f5114d16 (このIDを非表示/違反報告)
吉田(プロフ) - 作者様は神でしょうか?( ˘ω˘ ) スヤァ… (2020年3月5日 1時) (レス) id: fb4495920c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱鷺 | 作成日時:2020年1月19日 23時