25.世界はキミを嫌っていく ページ27
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私が使う刀はちょっとした業物だ。
いわゆる少し呪われているって奴で、扱いにくいが慣れれば便利な刀。
「ふっ、」
空中で身をよぎりながら横一線に刀を振るう。
おそらく手と呼べるような呪霊の部分を切って、地面に降りると自分の後ろに刀を向けた。
『ゔ、ゥゥゥあ”??』
私の着地を襲おうとしていた呪霊の核を刀は貫き、断末魔をあげて消えた。
ふっと一息つくと、ぱちぱちと軽薄な拍手が聞こえてくる。
「見てないで手伝ってよー、すぐる」
今日の任務は珍しく傑と私の二人ペアだった。
多分今日の任務は殲滅型だから純粋に人を増やしただけで意味はないんだろうけど。
廃墟の中、視界を覆うほどいた呪霊は今や姿形もない。
「いや、私の呪霊出したらAさんに切られそうだったから」
「傑の呪力ぐらい見分けられるもん!
それに、素手だって強いじゃん…」
「ははは……」
「ま、言いたくないなら深くは聞かないよ」
笑って誤魔化す傑をジト目で見る。
まぁこれぐらいの運動は苦ではないからそれほど責めるものでもない。
しょうがないなぁ、と笑う私は我ながら後輩に甘いと思った。
ポロポロと細かい破片がこぼれるコンクリートが剥き出しの天井に、この廃墟から早く出ようと瓦礫を踏み倒した。
後ろから「先輩」と声をかけられる。
「なぁに」と振り返って、首を傾げた。
「こうして何度か先輩と任務につきましたが、一度も貴方が術式を使って戦っている姿を見たことがないと思ったんです」
「ふーん。で?
呪術師に術式を見せろっていうのは、御法度だよ??
別に隠している人も珍しくない。
それぞれ弱点ってものがあるからね」
今度は挑発するように笑った。
すぐに表情が硬くなった傑に、どうしたの?と近づく。
そんなこと傑もわかっているんだ。
分かっていて聞いてきた。その真意が私は知りたい。
「……親しい人の事を、もっと知りたいと思うのは傲慢ですか?」
「…」
数秒固まって、
時間をかけて言葉を噛み砕いて飲み下した。
胸の奥底がじわりと暖かくなるようなこの感情の名前は……。
湧き上がる愛おしさに、勢いのまま高い所にある頭を撫でてやる。
本当なら抱きしめたい気分だが、身長差がそれを許さなかった。
傑は頬を赤く染めてやめてくれと言ったが、気が済むまで離れない。
言葉にしたら形を変えてしまう、儚い想いは
こんな不器用な行動でしか、
この衝動はつたえられない。
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かるうら(プロフ) - 50話分しかなかったはずなのに、今までにないくらいの重量感で恐れ入りました。なんだか第5章くらいまで読んだ気分です。2章に行って参ります! (2020年8月3日 21時) (レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
サイコロ - 最の高だ…推しが絡んでる… (2020年3月19日 16時) (レス) id: d3e3d1ba1a (このIDを非表示/違反報告)
さとう - とても面白いです!応援してます! (2020年3月9日 19時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - 吉田さん» いいえ!神様は芥見下々先生です!!!でも、そう思ってくださり嬉しいです (2020年3月6日 22時) (レス) id: b5f5114d16 (このIDを非表示/違反報告)
吉田(プロフ) - 作者様は神でしょうか?( ˘ω˘ ) スヤァ… (2020年3月5日 1時) (レス) id: fb4495920c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱鷺 | 作成日時:2020年1月19日 23時