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24.封印の地 ページ26

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最後に社の前に花束を置いた。
手を合わせて、過去の人を(しの)ぶ。



「なぁ。なんで墓じゃなくてこっちに来たんだよ」



悟の今更の質問に、少し笑った。

きっと優しい傑は真実を察していて、
口にしなかったのだろう。



「あの人の死体は見つからなかったから、、、
名義の墓はあってもそこに埋葬されてないの。

それに、……任務の後私は意識不明でその人の葬式には参加ができなかったから」



だからこっちでいいのだ。

誰もいないところで泣くつもりだった。



この森で、

一人泣いて、

飲み込んで、

《過去》にしようとした。



思いがけず二人がついてきてしまったから涙は見せられない。


後ろを振り返って、大きくぽっかりと開いた穴を見た。

凄惨な闘いの後。
別に、死体が消えても不思議じゃない。



「あの穴開けたのは誰だ?」



その質問には答えないで目を伏せる。
目がいい彼は、この事件のおかしい何かに気付いてしまったのか。


それでも、悟るならいつかわかる。



《反転術式》を扱えるようになった時、
この事件の真相に気がつくのだ。



「帰ろうか」



――――――
―――



新幹線と電車に揺られて東京に戻った。
帰りに3人で外食をしてから寮に戻ると外はもう真っ暗だ。


なんだか酷く疲れてしまった。



解散して一人女子寮に戻ろうとすると、何故か悟がついてきた。
傑に視線を送ると、仕方ないなぁとでもいうように彼は笑って独り男子寮に帰っていく。


どうしたの、と聞いても悟は別にと要領を得ない。


悟にかまっても無駄かと思って、
自分の部屋に戻るとコートも脱がずにベッドに転がった。



ぎしりとベットが音を立てて、横に視線を送るとベッドの縁に悟が腰をかけている。

いつの間にか、いつもかけていたサングラスを外していて空色の瞳が覗いていた。



「A、」



悟が名前を呼ぶその声は、心地いい。


心地よさに目を閉じて強張っていた体から力を抜く。
だらんと、力が抜けた手を伸ばして悟の真っ白の頭を髪を梳くように撫でる。



「A、、」




目を閉じれば、眠りはすぐそこまでやってきた。
うつろうつろの中、伸ばしていた手が落ちる。
それは暖かい大きな手に包まれて。




眠るのは怖かった。
それでも、隣の体温が恐怖を払拭してくれる。




「A、、、俺は死なないよ」





その言葉が私にとってどれだけ幸福か。
彼は知っていて言ったのだろうか。

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設定タグ:五条悟 , 呪術廻戦   
作品ジャンル:アニメ
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かるうら(プロフ) - 50話分しかなかったはずなのに、今までにないくらいの重量感で恐れ入りました。なんだか第5章くらいまで読んだ気分です。2章に行って参ります! (2020年8月3日 21時) (レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
サイコロ - 最の高だ…推しが絡んでる… (2020年3月19日 16時) (レス) id: d3e3d1ba1a (このIDを非表示/違反報告)
さとう - とても面白いです!応援してます! (2020年3月9日 19時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - 吉田さん» いいえ!神様は芥見下々先生です!!!でも、そう思ってくださり嬉しいです (2020年3月6日 22時) (レス) id: b5f5114d16 (このIDを非表示/違反報告)
吉田(プロフ) - 作者様は神でしょうか?( ˘ω˘ ) スヤァ… (2020年3月5日 1時) (レス) id: fb4495920c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:朱鷺 | 作成日時:2020年1月19日 23時

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