21.おとなとこども ページ23
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立ち塞がる大きな壁にため息をついた。
相手は《順転》を扱う無限下術式の使い手。
私の術式で《虚数》にもぐり無理やり撒いても良かったけれど、それをするには今の体調では厳しすぎる。
《冬》の私は、弱い。
諦めて悟の横に並んで立った。
悟は何も話さない。
ただいつもの黒い制服で、黒いサングラスで、………黒の私服を選んだ私よりもよほど喪服のようだと思った。
暫くしたら部屋着から私服に着替えた傑がやってきた。
何も言わずともついて来ようとする二人に見せつけるように大きなため息をつく。
「せっかくの休みなのに、
私についてくるの?
言っとくけど面白いことなんて何もないからね」
それでも頑なに私から離れない二人にため息をついて、校門をくぐる。
「とりあえず、駅いくよ」
抱えている花束をするりと傑に取られた。
その空いた手は、悟によって奪われて大きい手に繋がれる。
荷物を持ってくれるのも、
手を繋いでくるのも、優しさじゃない。
私をゆるく繋ぐ、拘束具だ。
最寄りの駅について、3人分の新幹線の乗車券を買う。
傑が財布を取り出したけど手で制した。
どうせ、使う時間がなくて消費する予定のないお金だ。二人分の新幹線代ぐらい訳ない。
新幹線が止まる大きな駅について、
やっと腰を下ろす。
「で、どこ行くんだよ?」
耐えがたい空気を最初に破ったのは悟だった。
私は、中部地方のとある村の名前を挙げる。当然二人は知らないようで、首を傾げた。
「……先輩の墓参りについて行こうとする、君たちの考えてることがわからないよ」
「お前、自分がどんな顔してたかわかってねーだろ」
……自分ではうまく笑っているつもりだったのに、
そんなに表に出ていたのだろうか。
自分の頬を触ってみる。
マッサージするように揉めば、マシになる気がした。
「消えそうな顔してましたよ。
出かけたまま、二度と帰って来なそうな……、そんな顔でした」
「傑から電話きたときはびびったけど。
良かったなA。俺がコンビニに出かけてて」
「消えるなんて……、大袈裟だなぁ。
私だって感傷に浸りたいときだってあるんだよ」
窓の外を見る。
いつのまにか、都会から景色は田舎へと変わる。
一年前、その時もこうやって新幹線に乗っていた。
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かるうら(プロフ) - 50話分しかなかったはずなのに、今までにないくらいの重量感で恐れ入りました。なんだか第5章くらいまで読んだ気分です。2章に行って参ります! (2020年8月3日 21時) (レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
サイコロ - 最の高だ…推しが絡んでる… (2020年3月19日 16時) (レス) id: d3e3d1ba1a (このIDを非表示/違反報告)
さとう - とても面白いです!応援してます! (2020年3月9日 19時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - 吉田さん» いいえ!神様は芥見下々先生です!!!でも、そう思ってくださり嬉しいです (2020年3月6日 22時) (レス) id: b5f5114d16 (このIDを非表示/違反報告)
吉田(プロフ) - 作者様は神でしょうか?( ˘ω˘ ) スヤァ… (2020年3月5日 1時) (レス) id: fb4495920c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱鷺 | 作成日時:2020年1月19日 23時