弐拾漆 ページ43
「審神者が行方不明？」
「は、はい。」
こんのすけの硬い口をむりやりこじあけ出てきた言葉に首を傾げる。
「…………あの本丸で？」
「…はい、その通りです。」
「事の発端は？」
「原因は定かではありません。…ただ二ヶ月ほど前から突如紫苑様を初めとする就任した審神者が次々と消えるようになりました。」
「紫苑って…彼女が？」
「……はい。」
顎に手を当てながら考えた。
紫苑というのはクソガキ女…じゃなくて私が殴り飛ばして縛り上げたピンク女のことだ。
いけないいけない。つい口が悪くなってしまう。
ともかくその女が行方不明…、そういうことを考えるとある矛盾ができる＿いや、矛盾ではないが…
"彼等"は私にこのこと伏せていた。その行動から一つの結論ができる。
恐らく彼等は共犯で罪を犯し、それを今も続けている。
あやふやにして私にこのことを黙ることを選んだ。その後やってくる他の刀剣男士もこのことを話そうともしなかった。
…なんの為に？いや、答えなんて分かっている。
それよりもこうなった原因だ。
少なくとも彼等は優しかった。
そんな彼等に罪を作らざるおえなくさせた＿完全に崩壊へ導いたのは結果的にあのクソガキ女だろう。
そしてこんな事件が起きる原因はこんのすけは分からないと言っているがそれは恐らく…私だ。
自覚はなかったが、時期がここまで合うとそうでしかないだろう。
…でも、私がこの世界に来る前からあの本丸は崩壊していた。起爆剤があろうとなかろうといずれはこうなっていたのかもしれない。
「つまり、この時期に彼らが強制的に審神者にさせるのは…。」
「その正にその通りです。ただでさえ少ない審神者の資質を持つ者がいなくなる。
そして…その、蘇芳様ならお分かりでしょうけど…」
「…無駄死にしろってことね。」
「…。」
審神者がなんなのかは未だ分からない。
…だが、彼等にとっては時に審神者の持つ力を自分のものにするためにその者の魂を喰うと噂で聞いたことがあった。
彼等にとって私は何だったのだろうか。
…数時間前までは仲のいい友人のように思っていた。
だけど彼等は私が審神者の資質を持つ餌にしか思っていなかったのかもしれない。
私を心配していたのも私を油断させるため…。
「蘇芳様…その……まさか見習いの審神者をやらないとかとか仰らないですよね？」
自分のために精一杯生きていけるこの狐が酷く羨ましく思った。
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作者名：沙恵燬 | 作成日時：2019年2月1日 1時
