短 ページ18
本物と偽物
「山姥切じゃないなら彼の呼び方はなんでも良かったんじゃないの？」
「…。気が変わった。」
「ちょっと？！気が変わったって…。」
一体どういう風の吹き回しだ。理不尽にも程がある。
演練は終盤に向かっているというのに…！！
時間がない。
「フード男さん、国広も駄目なら何だったらいいのかしら？」
名も知らぬ彼をフード男さんと嫌味ったらしく呼ぶとピクリと反応した。
「…俺は、や……長義だ。」
最初の"や"はなんだ？
「………チョウギ？」
「長義。…今はそう言っておく。」
今どき珍しい名前だな。そんなことを思った。
「よろしく、長義。」
「………驚いた。ここまで鈍いとはね。興味が無いなら仕方ない話かな。
さ、今度はお前の番だ。俺の名を教えたのだからお前も名を教えるのが礼儀だろう？」
「……名前かあ。長義はどんな名前なら呼びやすい？」
名乗る名前を考えていなかったので、今更考えた。
「名がないのかな？」
「ちゃんと親に付けてもらった名前はあるわよ。
でもここじゃあ本名を口にしたら駄目なんでしょう？」
「…口に出してもいいのではないかな。」
「もう、そんなこと言ってたら神隠しにあうわよ？」
「……。」
神隠し、その字の通り本名を知られれば神様に連れていかれることがあるらしい。
刀剣男士はあくまで付喪神、最悪連れて行かれる場合があるそうだ。
こういう場で働く以上要注意しなければならない。
犠牲者はいるのかどうかは知らないが、政府が赤の他人である私にも教えた。
余程のことだと思う。
「…………全く、用心深い奴等だ。」
「奴等？」
私の事かと思ったが、複数人の言葉に首を傾げる。
誰のことを言っているのだろうか？
「…お前が気にすることじゃない。
…………それで、名はどうする。本名を名乗る名乗らないにしろこの先名がないと不便だろう。」
「……それもそうね。こういう時はパッと思いつく言葉を…。
りんごジュース、りんご美味しい、
…英語で言ったら閃くかしら…ごほん。
Apples?…Apples are delicious.
Apple juice?
No, it's not.
I want a word that looks more like a name.
An apple?
Apple juice?
.....No.As for fruit...No more!
I don't understand what I mean.」
手に持っていたりんごジュースで連想をしてついでに英語で言ってみたが、…結局諦めた。
「……途中で何言ってるのかわからないのだが。」
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作者名：沙恵燬 | 作成日時：2019年2月1日 1時
