ただの迷子に審神者は務まらない！【刀剣乱舞】 (ページ15)

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短ページ15

恋文

「す、すみません…！言いづらくて。」
にこりと無理のある笑顔を向けた。

笑い話にもならないこの状態から一刻も早く抜けたくて、離れようと試みるが……全く離れられない。

フードのイケメン男が私の腰に手を回してがっちり動けないように先手を打たれていた。

私が審神者に見えないように口パクで『離して。』と言うと、
『断る。』と言って全く聞く耳を持ってくれない。

…私が今離れると何か不味いことでもあるのだろう。

納得いかないが一旦そういうことにした。

まだまだ芝居は続く。

「君か謝る必要はひとつもない。心配になってついてきたが…正解だったな。

俺の女がどこぞの新人審神者に寝取られるところだったよ。」
最後の余計な一言は、明らかにあの人に喧嘩売ってる。

挑発やめて！
本当にやめていただきたい！

私の中で悲痛に叫んでいた。

「…っ。」

「だいたい、振られたなら素直に諦めようと思わないのかな？」

「…。」

「まあ、変な虫がよってくるたびに俺が守ればいい話だ。
変な虫ほど身の程を知らない輩が多くて困るな。」

「お前、黙って聞いていれば…！」

「はあ…、そう騒ぐな。
周りの迷惑になるだろう。君はそんなことも分からないのかな。」
いやいや、貴方の方がタチの悪い迷惑な輩じゃないか？

ここで殴り合いでも始まりそうな気がして間に入って謝る。
…彼から離れられないので変な謝り方になってしまった。
「挑発しないでっ！あといい加減離しなさいよ！

あ、あの本当にすみません！私の…カレシが、口が悪くて！」

「口が悪い？ふん、事実を言ったまでだよ。」

「～っ！もう！！」

彼の腕を押しのけ、審神者に謝った。
なんていったのか正直覚えていない。

男の審神者は私の謝罪もあって殴り合いに発展しなかった。

流石私だ。

本当に、本当に褒め讃えたい。

またいつものところで演練場を見る。
今日はりんごジュースを大量に買った。

飲みまくってやる。

「…なぜあんな奴に加担した。」

何を思ったのか不意にフードの男はそんなことを口にする。

不意に性格の違う誰かを見ているような気がした。

「…無駄な争いを好む趣味はないの。だいたい貴方こそなんで突っかかったのよ。

普段の貴方ならあんな事しないじゃない。そりゃ助太刀してくれたことは感謝してるし嬉しかったけど…」

いつもの反論の声がないので一瞥すると、ただ彼は黙って私があげた市販のクリームブリュレを見つめていたのだった。