ただの迷子に審神者は務まらない！【刀剣乱舞】 (ページ2)

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「＿では、今日はこれで失礼しますので、引き継ぎを宜しくお願いします。」

あの長い勤務時間、真面目に仕事をこなしようやく同僚と交代の時間になりぺこりとお辞儀して速やかに去った。

暇なのは変わらないので、私はいつものようにあの場所に行く。

(…よーし、誰もいないな。)

私はそこに着くと、壁を背もたれにして下に広がっている模擬戦を見物した。

ここはなんの代わりもないただの廊下なのだが、はなれなので誰も通らない場所で尚且つ演練場で戦う"彼ら"をみることが可能という素晴らしい私のお気に入りのばしょだった。

別に彼ら＿刀剣男士に興味がある訳じゃない。

戦い方、要は戦術に興味がある。

刀から顕現され、刀が動き、喋り…人間みたいな姿になる所から話がぶっ飛んでいるが、
それでも彼らの戦い方は莫大な経験をもとに培われている。
勉強出来る部分もあって、この暇な時間帯には持ってこいだった。

「…やっぱりあそこは一人で突っ込むよりも挟み撃ちした方が確実だわ。…でもあの子は素早いし不意打ちも出来るから＿」

彼らの動きを見て、勝手に脳内シュミレーションをはじめた。

時間がどんどん過ぎ去っていき、素晴らしい一時だった訳だが…

その終わりの合図はすぐそこまで近づいていた。

(まただ…。)

カツーン、カツーン、と硬い靴の音が閑静な廊下の中でこだまし、近付いてきているのが分かる。

しばらくして私の視界範囲に"彼"が入る。

あの清潔なフード付きマントを身に纏いフードを深く被った謎の男。

マントには四隅があり装飾がされていて、その布の隙間から胸元にはクロスタイと巾ネクタイが見える。

彼は通り過ぎることはなく立ち止まって私の隣で演練場の戦いを見物し始めた。

刀剣男士を思わせる格好だが、刀剣男士は演練場で戦い審神者とともに帰る。
…コスプレイヤーかもしれない。

大抵ここにいる人はスーツか私服か稀に巫女服だ。

私の場合、白衣に緋袴、白く長い手触りの良い羽織、そして動きにくい下駄、顔の前に紙を垂らし、長い髪を後ろで束ね…といった感じに私は本当にどこかの巫女服大好き変人か何かになっている。

つまるところ私は彼の趣味に対し何もいえないということだ。

そして何より重大なのは、実は彼と鉢合わせしたのはかれこれ今回で記念すべき15回目…約二週間も会っている、ということだ。

しかし、一度も話した事はない。目を合わせても挨拶も会釈もなかった。