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ルイスの口は開かれない。
何も映していない暗い目も微動だにせず、じっと妻を見つめている。
それだけではない、おかしな点は1つだけではなかった。

「それに、今朝着ていった白衣はどうしたの?いつも着ているというのに、どうして今は着ていないのよ、ねえ?」

ルイスは答えなかった。
嫌な予感が頭を過り、ヴィクトリアは声を張り上げる。

「どうして答えないのよ!?ええ、ええ、あなたはいつもそうだわ!人に散々命令しておきながらろくにこっちの言うことを聞いてくれやしないのね。
Aについてもそうよ。あの子が普通じゃないこと、分かってるの?あなたがあの子を部屋に閉じ込めているばかりに、Aは常識的なことどころか外の世界も知らなかったわ。
どうしてそこまであの子に執着するのよ…?」

答えない。

「答えて!」

質問には、答えなかった。


台所中に響くよう大きく舌打ちをし、男は眉間に忌々しそうにしわを寄せる。
そしてまた息子にしてみせたように、相手を刺し殺すような冷たい視線を放った。
ぎくりとヴィクトリアが退こうとするも、すぐ後ろは棚で行き止まりである。
負けじとこちらからも睨みを利かせるが、それよりも先にルイスが声を発する。


「Aが好きな肌はどんなものか?」


ヴィクトリアは拍子抜けした。
下手すればエイ国で1、2を争うほどの頭の良さを持つ夫が、そんな変な質問をしてこようとは思いもしなかったからだ。
何を下らないことを。
そう嘲ようとしたが、ヴィクトリアは察しがついた。
正確にいえばついてしまったのだ。


「……嫌よ、こっちを見ないでちょうだい…!」


ヴィクトリアに注がれるルイスの視線。
冷たいだけでない。
見下すような、値踏みするような、―――どう剥がしてやろうか、使ってやろうか。
そう言っている気がしてならない。
勿論それはいやらしいものではない、それどころか、もっと下劣で恐ろしいもののようであった。

身の危険を感じたヴィクトリアはすぐにルイスをどんと押し退け、夢中で台所から廊下へと走り出す。

「逃げて、A、Aっ!」

喉をかっぴらかんばかりに大声で叫びながら外へと急ぐ。
けれど、そうはいかなかった。

「あ…」

玄関扉を囲むようにしてヴィクトリアの前に立ちはだかる、小型の箱のような物体。
側面の腕らしき物にはピストルが備え付けられており、その黒く奥が見えない銃口をこちらに向けている。
屋敷を各々巡回しているはずの機械たちが集結していた。

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作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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白梅 和平(プロフ) - ccさん» コメントありがとうございます!第3章は特に内容が複雑なため書くのに苦労しているのですが、ちゃんと伝わっていると分かり安心しました。久々のコメントで嬉しかったです。更新頑張ります! (2018年4月8日 14時) (レス) id: 4fe8a6b6f6 (このIDを非表示/違反報告)
cc(プロフ) - 情景描写が繊細で、独特な世界観にすぐ引き込まれてしまいました。もっと評価されるべき作品だと思います。続き、楽しみにしています! (2018年4月7日 10時) (レス) id: 3524d9e2e8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白梅 和平 | 作成日時:2017年7月4日 21時

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