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「ルイス様、いかがなさいましたか」
とても、Aと同じ年齢の子どもとは思えない。
嫌に他人行儀な調子だった。
不機嫌なルイスの態度には慣れているのだろうか、少年はハキハキと笑顔のまま言葉を述べる。
ルイスもその表情を一切崩すことなく要望を言う。
「Aの話し相手になってやれ。今すぐにだ」
「A様のお話相手ですね。承知いたしました、すぐ向かいます」
見れば少年の部屋にある机には、開かれたままの本や何枚にも重ねられた紙、インクの乾ききっていないペンが置かれている。
特に紙には、もはや模様と化している数字とエイ語が隙間なく並べられ、だが美しい芸術作品にも見える。
勉強の最中だったか。
しかし少年はそのままルイスに深々とお辞儀し、部屋の扉をそっと閉めた。
そして、Aの部屋の方へと足早に去っていった。
ルイスはその姿を確認すると、ゆらりと廊下の奥へ進んでいく。
どうやら地下に続く階段があるらしい。
つかつかと下りていくと、彼の姿は闇に消えた。
Aのもとへ急ぐ中、少年はぼそりと呟く。
「今日も、名前を呼んでもらえなかった…」
少年が記憶する限り、ルイスから名前を――ディアンと呼んでもらったことは1回もなかった。
目指していた場所に着くと、少年改めディアンは丁寧に扉をノックする。
「入っていいよ〜!」
扉の向こうからはパっと花が咲いたように明るい声が返ってきて、自然とディアンの頬も緩む。
許可が出たので扉を開ければ、双子の姉が出迎えてくれた。
屈強のないその笑顔にはまるで穢れがなく、心の底から喜びを露わにしている。
何か口にする前にAに腕を掴まれ、部屋の真ん中に用意されていた椅子に座らされた。
「ルイス様にA様とお話するよう命じられたのですが…あっ」
ディアンはすぐに口を押さえたが、Aは聞き逃さなかった。
「だーかーらー、2人だけの時は敬語禁止!なんとか様って呼ばないの!」
頬をぷくりと膨らませ言い聞かせるようにきつめに言う。
ディアンは「はい」と返事しようとしたが、慌てて「うん」と言い繕った。
満足したらしいAは再び笑顔に戻り、自分はベッドの上に腰かける。
少しばかり足をプラプラとさせながら、彼女は「お話を聞く会」を始めた。
「ねぇディアン、今日は学校でどんなことをしたの?」
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白梅 和平(プロフ) - ccさん» コメントありがとうございます!第3章は特に内容が複雑なため書くのに苦労しているのですが、ちゃんと伝わっていると分かり安心しました。久々のコメントで嬉しかったです。更新頑張ります! (2018年4月8日 14時) (レス) id: 4fe8a6b6f6 (このIDを非表示/違反報告)
cc(プロフ) - 情景描写が繊細で、独特な世界観にすぐ引き込まれてしまいました。もっと評価されるべき作品だと思います。続き、楽しみにしています! (2018年4月7日 10時) (レス) id: 3524d9e2e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白梅 和平 | 作成日時:2017年7月4日 21時