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[-ジェイムズ’s side-]
足音軽く駆け去っていく少女の背を見送り、病室に入る。
数日前にようやく車椅子生活から解放されたばかりのジョディ君は、まだ少なからず痛むだろう怪我のことなど微塵も感じさせない様子で、ベッドから起き上がろうとしていた。
「まったく、まるで小さい頃の君を見るようだ。証人保護プログラムを拒み続け、受ける代わりにFBIに入れろと啖呵を切った君を、ね」
そんなかつての少女が、今では同じ志を持ったチームの一員として、共にこの異国の地に立っている。
彼女の成長をそばで眺めてきた一人の人間としては、何やら感慨深い気持ちが湧くのを否定することはできなかった。
あの謎めいた少女には私たちの手を取ることを拒まれてしまったが、我々がベルモットや組織を追い続ける限り、きっとまた縁が繋がることもあるに違いない。
いつの間にやら立ち上がって窓の外を眺めているジョディ君の視線の先には、きっと少女の姿があるのだろう。
「…あっ、」
「どうかしたかね」
突然、ジョディ君が小さく声をあげて窓の向こうを覗き込んだ。私の立つ位置からは空とビルばかりしか見えていないのだが、もしや、少女の身に何か危険でも生じたのだろうか。
咄嗟に確認しようと足を踏み出した私は、しかし、続く彼女の言葉に安堵して結局窓の外を確認することはしなかった。
「いいえ、あの子が誰かにぶつかったのが見えて…でも、大丈夫だったわ。転んだ訳でもないし、もう元気に歩き出してる」
「そうか」
何も心配はないと確信したらしいジョディ君は、窓辺から離れると再びベッドに腰掛けた。
まだ本調子ではない彼女の身体にとっては、立っていることさえ大きな負担となるのだろう。

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櫂渦【とーか】(プロフ) - 凛月さん» そう言っていただけて嬉しいです!スローペースで恐縮ですが、更新頑張ります! (2024年3月5日 23時) (レス) id: 7ff0039a36 (このIDを非表示/違反報告)
凛月(プロフ) - コメント失礼します。とーかさんの作品大好きです!ジンが好きになりました!続きが更新されるの楽しみにしています! (2024年2月22日 7時) (レス) id: fd1ac83801 (このIDを非表示/違反報告)
櫂渦【とーか】(プロフ) - 如月さん» 必ず完結させますので、気長にお待ちくださると嬉しいです。また、支部では本作の特別編(季節物、if、映画など)シリーズを設けているので、次の更新までの繋ぎとしてお楽しみいただけるかもしれません。これからも男主を見守ってくださると幸いです(,,ᴗ ᴗ,,) (2024年1月3日 11時) (レス) id: 7ff0039a36 (このIDを非表示/違反報告)
櫂渦【とーか】(プロフ) - 如月さん» 如月さま、作者冥利に尽きるお言葉をくださり、ありがとうございます!そして、ご指摘の通りしばらく本編の更新が滞っておりますことについては大変心苦しく思っております。多忙に加え、先の展開に悩んでいることもあり、現状、更新が不定期の状態となっております…。 (2024年1月3日 11時) (レス) id: 7ff0039a36 (このIDを非表示/違反報告)
如月 - この作品を何度も繰り返し読んで、何度も一気読みして…その度に更新されていない気持ちを、失礼の無いようになんと表したら良いのか、私にその術はありませんが…更新を心待ちにしています。ストーリーがしっかりしていて、とても大好きな神作品です。応援してます!! (2023年12月29日 22時) (レス) @page45 id: 8435ceb2da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫂渦【とーか】 | 作者ホームページ:https://www.pixiv.net/users/28997649
作成日時:2023年6月26日 21時