955. わかってる。 ページ6
「ベルモット……。てめぇ、Aをどこにやりやがった…！」
私を見つけるや否や、地を這うような低音でそう詰め寄ってきた目立つ銀髪の男。濡れ衣で敵意を向けられたくもない私は早々に、ポケットに入れていた鍵を彼へ投げ渡した。
「36階のコーナー、無駄に夜景の綺麗なスイートよ。勘違いしないで頂戴ね、私はpuppyに追い出されたの」
「チッ、今Aは一人か。無事だな？」
喋りながらも、遠慮のない大股でエレベーターホールへと歩みを進めるジンに、置いていかれないよう駆け足で後を追いながら声をかける。
ジンのためでも私のためでもなく、他ならぬAのために、どうしても伝えておきたいことがあった。
「ええ、限界だとは思うけれど、あの子なら大丈夫なはずよ。ただ、どうしても伝えておきたいことがあって。耳を貸してくれるかしら」
「もったいぶるんじゃねぇ、簡潔に言え」
ポーン、と音が響いて、私たちにエレベーターが到着したことを知らせる。当然のように乗り込んだジンのせいで、私まで意味もなく36階まで逆戻りする羽目になってしまったが、今ばかりは文句を言う気も起こらなかった。
Aが最優先。その一点において現在、私とジンの目的は一致しているのだから。
「Aの症状に、心当たりがあるの。恐らく同じ薬を私も過去に何度か飲まされたことがあるし、飲ませたこともあるわ」
「効果は何だ」
「男性が飲んだ場合は、テストステロンの極端な活性化とドーパミン放出を引き起こすはず。だから、ただ興奮しているというよりも今のAはもっと本能的な部分を煽られているはずよ」
「フン、そういうことか」
すっかりわかったような返事をして頷いたジンは、しかしチラリともこちらを見ることなく、ただ閉じられた扉の向こうだけを睨みつけるように見つめていた。心ここに在らず、という状態に見えなくもない。
この男は、私が訴えようとしたことの意味を、本当に、わかっているのだろうか。
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櫂渦【とーか】(プロフ) - シリーズを繋ぎ直しました！続きを読む、で次の話に飛んでいただけます！ (8月14日 23時) (
レス) id: 7ff0039a36 (このIDを非表示/違反報告)
櫂渦【とーか】(プロフ) - 点Ｐさん» ごめんなさい、コメントいただいて初めて次の話にシリーズが繋げられていなかったことに気づきました！まだ続きもupしてあるので、お楽しみいただけると幸いです！ (8月14日 23時) (レス) id: 7ff0039a36 (このIDを非表示/違反報告)
点Ｐ - 追いつきました…最高です！今まで見た中で一番好きです！最新頑張ってください！ (8月14日 21時) (レス) @page50 id: 7d48b43935 (このIDを非表示/違反報告)
櫂渦【とーか】(プロフ) - 乌罗伊利亚さん» ありがとうございます！これからもお楽しみいただけるよう頑張って参ります！！ (7月4日 21時) (レス) id: 7ff0039a36 (このIDを非表示/違反報告)
乌罗伊利亚 - とても面白かったです！今、一番好きな作品です 更新頑張ってください！！ (7月4日 12時) (レス) @page50 id: 21b25aa0ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：櫂渦【とーか】
| 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/users/28997649
作成日時：2023年3月11日 21時
