サブチャンネル【短編集】

煙 てつや ページ8

すれ違いの話です


煙/Saucy dog


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『ただいま。』



「ん。おかえり」



私たちは、同棲している。3年、4年くらい？とにかく長い時間だ。
…逆に言うと、こんなに長い時間を過ごしているのに、まだ『同棲』なのだ。そりゃてっちゃんはYouTuberで、忙しいし色々あるのかもしれないけれど、しばたくんは結婚して幸せそうだし二人ともいい歳だし…


ふぅ、とため息を吐いててっちゃんの隣にぼずっと座る。てっちゃんは私が差し出した缶ビールを受け取ると、さっと私の目線から隠すようにスマホを消した。いや、ちらっと見えたけど。LINEのトーク画面。


『…ねえ。』



「…んー、なに？」



『次の日曜さ、遊びに行かん？』



「え、外？…やったら、お家でだらだらしやん？そっちの方がコスパいいしイチャイチャできるやん。」



『でも、…そだね、お酒買っておく。』



もう3ヶ月ほど、デートには行ってない。新しくハイヒール買ったのに、結局使わないかもしれないな。



別れるべきかなあ、と思った。
りょうくんに相談したら遠回しに飽きたのかもねって言われたし、今別れとかないともう一生結婚できないかもしれない。
覚悟を決めてずっと息を吸い込む。



『…てっちゃん、別れよっか。』



「…は？」


一拍おいて、てっちゃんがすごい勢いで顔を上げた。なんだよ、さっきまで女の子とLINEしてたくせに。


「え、な、なんで？」


『だっててっちゃん、もう私のこと好きじゃないやん？』


「なんで…そんなこと思っとらんやん…。」


てっちゃんが悲しいような、困ったような表情で私の方へ歩み寄ると、ぎゅっと抱き締めてきた。


『…ずっと女の子とLINEしてるし、最近デートもしてくれん、このままずっとこうして歳とるの、しんどい…。』


言ってるうちにぽろぽろ涙が零れてきて、てっちゃんの服に染みをつける。


「まって、俺そもそも女の子とLINEしとら…」


『しとったやん！』


体を引き剥がして、てっちゃんのことを精一杯睨みつけた。彼が目を丸くする。




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続きます

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