サブチャンネル【短編集】

キティの恋 りょう ページ14

コンプレックスの話です。


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昔から、女の子にしては背が高い方だった。

小学校の頃、遠足で先生だと間違えられた。
中学校、小学生の時ほどではないけど、ヒールを履いたら、男の子も余裕で抜かせてしまえた。
高校で、好きな男の子に勇気を出して告白した。「隣に立つと、俺がみっともなく見える」なんて理由でフラれてしまった。


身長が高いことによるメリットなんて、精々ものが取りやすいくらいで、他にはなんにもなかった。それに比べてデメリットはたくさんある、ヒールは履けない、ふわふわした女の子らしい服は似合わないし、勝手にクールな人だと決めつけられる。
そしてなにより、好きな人の隣に立てないこと。


私は、この身長がきらいだ。



＊


「乾杯〜〜！」


ワイワイガヤガヤとうるさい金曜日の居酒屋。

サークルの子から合コンに(無理やり)誘われ、断りきれずに来てしまった。
数合わせとはいえ、あの時しっかり断れなかった私の気弱さを呪う。


「ねーえ、Aちゃんって身長何センチだったっけ！」


よく知らない女の子が大声で聞いてきて、周りの注目が一斉に集まる。と、同時に私の顔にも熱が集まるのを感じた。


『あ、えと…174、ちょっとかな？最近測ってないからわかんないや〜』


あはは、と誤魔化すように笑う私に、おお、とちょっとしたどよめきのようなものが上がった。

「すごーい、モデルさんじゃん！あたしなんて150なくてさあ…」


そのまま1層高いトーンで男に話しかける女の子と、それぞれ元の空気に戻っていく男女のペア。


「なにあれ、絶対Aのことダシに使って自分の可愛さアピったじゃん！」


ちょームカつく、と言いながらビールを飲む友達に、苦笑いして俯いた。


「あんたもさ、身長なんか気にしてないでなんか言い返してやんなよ！気はちっさいんだから、もう、」


『…そうだね、ごめん。…私ちょっとお手洗い行ってくるね』


できるだけ何でもない風に、何も気にしてない風に。
座敷から降りて、自分のぺたんこな靴を探し出して、出来るだけ足早にお手洗いに向かった。

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