28.鈴芽side ページ30
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低く鳴る風の音。その風に混じって聞こえる、水の流れる小さな音。
「──────⋯っ、」
目を覚ますと、周りは暗くて、ずっと高い所から、空の淡い光が漏れている。
見覚えのない場所。
これは夢なの⋯?
本当に自分の目は開いてるのか不安になって、何度か強く瞬きをする。
私たちは確か⋯空から、落ちて⋯それで────
だんだん思い出してきて、ぼーっとしてた意識が、少しずつ鮮明になっていく。
上半身だけ起こして、ポケットから携帯を取り出す。
「⋯ここは、どこ⋯?」
液晶画面が眩しくて、目を細めながらマップを開く。
「⋯川の、下⋯?」
その時──────
「⋯──────A⋯っ⋯!」
少し遠くから草太さんの声が響くように聞こえてきて、私はハッとして立ち上がる。
「⋯草太さん⋯っ、」
声の聞こえる方へ走っていくと、そこには──────巨大な門があった。
その中で、きらきらと星が
「⋯これ、東京の後ろ戸⋯?」
後ろ戸の中の星空の下には、真っ黒な丘みたいなシルエットが見えていて、そのてっぺんには──────小さく刺さった、綺麗な藍色の石像。
Aさんが──────ミミズに、刺さっている。
「⋯A⋯っ」
草太さんは泣きそうな声で、Aさんの名前を、何度も呼んでいた。
「⋯草太さん、」
草太さんに声をかけると、私の方に顔は向けず、代わりにそっと門に手を伸ばした。
「⋯こんな、⋯こんな手が届くほど近くに居るのに、届かないんだ⋯」
草太さんは、苦しそうにそう呟いた。
私なら入れるかもしれないって、走って門をくぐっても、ダイジンを抜いた九州の後ろ戸の時と全く同じ。
くぐり抜けてるはずなのに、元の場所に戻るだけで⋯
こんなにも、近くに見えるのに。
「──────⋯Aは、常世にいるんだ」
草太さんは、両手で自分の顔を覆った。
鼻をすする音がする。
顔を隠してるけど、目の前の後ろ戸の星空のせいで、反射した涙が見えてしまった。
──────もう、草太さんの気持ち、気付いたよ。
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ムスメ3(プロフ) - 待ってました!!!!ご自愛してね (6月19日 0時) (レス) @page31 id: fcb0ec653e (このIDを非表示/違反報告)
ネコ型ロボットだけど人っす(( - いや〜、主人公ちゃんが要石になってしまった…、こんなストーリーもいいもんですね!作者さんすげぇ、自分はこんな凄いの書けませんよ、そもそも思いつきすらしませんww私は書くよりも見る派なので!(?)これからも頑張ってください!応援してます! (2023年4月4日 16時) (レス) @page31 id: 3d37e04deb (このIDを非表示/違反報告)
RENA(プロフ) - すきです!!更新されるのを楽しみにしてます.がんばってください! (2023年2月5日 23時) (レス) @page31 id: a8ec99ccfe (このIDを非表示/違反報告)
なな - すごくすきです! (2023年1月16日 1時) (レス) @page30 id: b79c82ab1a (このIDを非表示/違反報告)
まりも - めっちゃ好きです!更新楽しみにしてます〜!! (2023年1月9日 14時) (レス) @page30 id: ee77e8b131 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:萌娜 | 作成日時:2022年11月27日 21時