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「ななななな、何だあれ!?」
『何って、人だね』
「どうしてそんな落ち着いてるの!?」
平然と鳥につつかれながら流れる足を眺める青年の横で敦はあたふたしている。
だが、何を思ったのか突然川に飛び込んだ。
『うわ!⋯⋯え?』
躊躇なく飛び込んだ敦に驚く青年をよそに、敦は半分溺れそうになりながらもなんとか
流れていた男を川辺に押し上げた。
蓬髪で身長の高い男だ。
「おい!少しは手伝ってくれても良かったんじゃないか!?」
『えぇ⋯⋯』
倒れる男性を前にしてもまだ他人事のような顔をする青年に敦は少し腹がたつ。
だが敦がなにか言い返す前に、倒れていた男がガバっと起き上がった。
「うおっ!」
『あ、生きてる』
「あ、あんた川に流されて⋯⋯大丈夫?」
「⋯⋯助かったか⋯⋯⋯⋯ちぇっ」
『⋯⋯ちぇっ?』
───「ちぇっ」つったかこの人!?
「君達かい、私の入水を邪魔したのは」
『助けてもらったのにそれはないんじゃ⋯⋯⋯⋯入水?』
「知らんかね入水。つまり自'殺だよ」
「は?」
素っ頓狂な声を出す敦の前で、男はブツブツとなにか言い出した。
だがその内容は全く敦の耳には届いていない。
───あれ?僕今怒られてる?っていうか自'殺って、自'殺願望者助けたの?
横を見ると、『ほら、助けなくて良かったじゃん』と言わんばかりの顔で青年が見つめていた。
「まあ⋯⋯人に迷惑をかけない清くクリーンな自'殺が私の信条だ」
そんな自'殺あるわけ無いだろと二人同時に思ったが、どちらも何も言わなかった。
何を言っても無駄だと理解したのである。
「なのに君達に迷惑をかけた。これは此方の落ち度。何かお詫びを⋯⋯」
ここで敦と青年の腹が同時に鳴る。
ドタバタして忘れかけていたようだが、二人共餓死寸前である。
それを見た男はクスリと笑った。
「空腹かい?」
「じ、実はここ数日何も食べてなくて⋯⋯」
そう言う青年と敦が、「なにか食べさせてもらえるのでは?」と思った時、その場に男の腹の音が響く。
「私もだ。ちなみに財布も流された」
『えぇ⋯⋯なんか奢ってもらえると思ったのに』
「?」
『ハァ⋯⋯』
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暁月臨(プロフ) - 凄く面白いです!更新待ってます!! (6月24日 16時) (レス) @page16 id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
雪ん子(プロフ) - 凄い好きです❗️続き待ってます! (4月26日 17時) (レス) @page16 id: fa924563b5 (このIDを非表示/違反報告)
クラスペディア(プロフ) - 面白かったです!更新待ってます✧*。 (2022年12月22日 13時) (レス) id: d83e92e5af (このIDを非表示/違反報告)
かな(プロフ) - 面白いです✨ (2022年12月20日 5時) (レス) @page14 id: a32747b1ee (このIDを非表示/違反報告)
響輝@お気に入り400人突破ベリサンキュ(プロフ) - 面白かったです。続き楽しみにしてます (2022年11月24日 0時) (レス) id: d6b5ec7764 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:棘屋 | 作成日時:2022年11月21日 7時