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「敦君、経営が傾いたからって養護施設が児童を通報するかい?大昔の農村じゃないんだ。いや、そ
もそも経営が傾いたんなら一人二人追放したところでどうにもならない。半分くらい減らして他所の
施設に移すのが筋だ」
『⋯⋯太宰さん?』
その時、月を少し隠していた雲が流れ、月光が敦を照らした。
視界が明るくなった途端、敦は自身の鼓動が早くなっているのを感じた。
「敦君が街に来たのが二週間前、虎が街に現れたのも二週間前。君が鶴見川べりにいたのが四日前。
同じ場所で虎が目撃されたのも四日前」
太宰の言葉はを敦は聞いていない。
「国木田君が言っていただろう。武装探偵社は異能の力を持つ輩の寄り合いだと。巷間には知られて
いないがこの世には異能の者が少なからずいる」
敦の目が見開かれる。その瞳はもう人間のそれではなかった。
『⋯⋯え?』
「その力で成功する者もいれば⋯⋯力を制御できず身を滅ぼす者もいる」
次に太宰が敦を見たときには、もう既に彼は人間ではなかった。
純白の毛にたくましい手足。
「大方施設の人は虎の正体を知っていたが君には教えなかったんだろう」
『敦、君』
「君だけが分かっていなかったのだよ。君も異能の者だ。現身に飢獣を降ろす月下の異能力者⋯⋯」
敦の頭から足の先に至るまで、もう「それ」に変化しまっていた。
人食い虎の正体は彼だったのである。
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暁月臨(プロフ) - 凄く面白いです!更新待ってます!! (6月24日 16時) (レス) @page16 id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
雪ん子(プロフ) - 凄い好きです❗️続き待ってます! (2023年4月26日 17時) (レス) @page16 id: fa924563b5 (このIDを非表示/違反報告)
クラスペディア(プロフ) - 面白かったです!更新待ってます✧*。 (2022年12月22日 13時) (レス) id: d83e92e5af (このIDを非表示/違反報告)
かな(プロフ) - 面白いです✨ (2022年12月20日 5時) (レス) @page14 id: a32747b1ee (このIDを非表示/違反報告)
響輝@お気に入り400人突破ベリサンキュ(プロフ) - 面白かったです。続き楽しみにしてます (2022年11月24日 0時) (レス) id: d6b5ec7764 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:棘屋 | 作成日時:2022年11月21日 7時