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あっという間に二月となった。天元くんとの時間はやはり増えていた。毎日の電話も、部活がない日の登下校も。今はお弁当もたまに一緒に食べるぐらい。
ちらほら、と周囲からは付き合っているのか、という疑問の声が飛び交っていた。それを聞こえないふりをして、優越感に浸っている自分の意地汚さに寒気がしたりもしたが、それ以上に彼との時間が大切で愛おしい。
でもかわりに、杏との時間はめっきり減ってしまったと友達に言われて気付いた。確かにそうだ。土日はアルバイトがあって、平日は天元くんに合わせてしまっている。まあでも、杏とはベランダからいつでも話が出来るし。私が気にすることでもないか。
空っ風が、溢れすぎて止められない熱い恋心を少しは冷ましてくれると期待したけれど、そんなことはなくて、寧ろどんどん高まる想いに自分自身も着いていけなくなりそうだった。そんな時だ。
「Aちゃん」
「天元くん、これから部活?」
「おう」
校門に向かう途中にある体育館からバスケ部の練習着に身を包み、そして前髪部分を提灯鮟鱇のように結う天元くんが声をかけてくれた。あまり見ない練習着姿に少しだけドキッとしたのは内緒だ。
「帰りか?」
「うん。今日バイトなんだ」
「そっか。帰り気ぃつけてな」
「ありがとう、部活頑張ってね」
「おう。あのさ」
「なに?」
中々、言い出さない彼の頬は赤かった。目を逸らして、明らかに様子が可笑しかった。どうしたのか、と訊こうとすれば彼は、「バレンタインってさ」と大きな声を出した。
「誰かにあげんの?」
「え?」
「だからさ、バレンタイン、誰かにやんの?」
「いや。たぶん、今年も杏と千くんだけだと思うけど」
「……今年はさ、俺だけにしてよ」
「意味、わかる?」と真っ直ぐに私を見つめた。呼吸が止まってしまった。
「Aちゃんから、チョコ、欲しいんだけど。煉獄にはあげんな。俺だけに本命作って来てよ」
「ダメ?」と私のブレザーの袖を少しだけ天元くんは摘み首を傾げた。そして、「お願い」と私の顔に自身の顔を近づけた。私は嬉しくて嬉しくて堪らなかった。
「……私でいいの?」
「いいよ。Aちゃんがいいんだけど、俺」
「本当に本当?」
「派手に疑り深いな。本当だよ」
「……苦手なものある?」
「ない。Aちゃんが作って来てくれたものだったら何でも食うし美味いし嬉しいぜ」
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三月の専属ストーカーなつめみく - れんごくさんがむせるとよもっ、って可愛すぎて一人で悶絶するわ (10月25日 16時) (レス) @page3 id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - ひよさん» ひよさん、またお会いできて本当に嬉しく思います、そしてコメントもありがとうございます(;_;)天元様と夢主のキラキラして輝く瞬間と2人の葛藤を書けていけたらな、と思っております。ゆっくりではありますがお付き合い頂けると嬉しいです!よろしくお願い致します! (2022年5月5日 18時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 蓮さま、新作ありがとうございます!! 学校のアイドル、天元さまは似合いますね♡ 純な夢主ちゃんと天元さまの恋がどう進むのか楽しみです。更新はどうか、無理のないペースで!! (2022年4月29日 20時) (レス) @page7 id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蓮 | 作成日時:2022年4月24日 14時