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「ううん。大丈夫だよ。兄弟いっぱいだね」
「九人兄弟。一番のチビはこの間幼稚園の年少クラスになったわ」
「可愛いね。毎日楽しそう」
「うっせぇけど齋藤ちゃんの言う通りだなぁ、派手に」
優しく笑う彼。家族を大切にするところは杏と同じで、素敵だし尊敬できる。
「煉獄はどうしたんだ?今年も齋藤ちゃんと過ごすって張り切ってたぜ」
「そのつもりだったんだけど杏、一日練習試合になっちゃって。あと杏の弟くんが風邪引いちゃってね。今年はやめておこうってなったの」
「……あー、ね。そういうことかあ。煉獄、不憫すぎるな」
「今更クリスマス当日にって感じも私はしちゃうんだけどね。他の日に三人でケーキ食べればいいかなって」
「……なるほど。おもしれぇ」
「んじゃ一人ってことかあ」と宇髄くんは言う。すると「これ」って自身が持っていた袋から一つの小袋を私に手渡した。
「これは?」
「大したもんじゃないけど。一人は寂しいだろ?メリークリスマス、なんちって」
少しだけ照れ臭そうに、ニカッと宇髄くんは笑った。私を気遣い、さりげない優しさをふるってくれた彼に、胸がいっぱいになった。
「ありがとう」
「どういたしまして」
「開けてもいい?」
「もちろん。弟たちへのプレゼントの一つだけどね」と、小さく彼は謝った。中を見ると小さな白い熊のぬいぐるみだった。チャームがついていて、鞄などにもつけられるものだった。
「可愛い」
「齋藤ちゃんは白っぽいからさ。気に入って貰えたみたいでよかったわ」
「悪りぃ。そろそろ行くな」と宇髄くんは携帯を見た。家族から連絡が来たみたいだ。
「ありがとう、宇髄くん」
「おう。んじゃ」
駐車場に小走りで向かう宇髄くんは何度も後ろを振り向き、大きく手を振ってくれていた。宇髄くんが見えなくなって、我に帰った私は、心臓を大きな手で握り潰されたみたいに苦しくなった。しかし一方で、途方も無いほどの無常の喜びに包まれた。
────クリスマスは時間制で女の子たちと遊んでるよ。
友達が以前、宇髄くんのことをそう言っていた。私も実際、そうだと思っていた。色んな女の子に甘く囁いて、手を取って。でも、でも。でも本当は。
目には見えない小さな何かが降り積もるのを感じた。貰ったぬいぐるみを抱き締めて、空を見上げれば、粉雪がふわり、ふわりと溶けていた。
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三月の専属ストーカーなつめみく - れんごくさんがむせるとよもっ、って可愛すぎて一人で悶絶するわ (10月25日 16時) (レス) @page3 id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - ひよさん» ひよさん、またお会いできて本当に嬉しく思います、そしてコメントもありがとうございます(;_;)天元様と夢主のキラキラして輝く瞬間と2人の葛藤を書けていけたらな、と思っております。ゆっくりではありますがお付き合い頂けると嬉しいです!よろしくお願い致します! (2022年5月5日 18時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 蓮さま、新作ありがとうございます!! 学校のアイドル、天元さまは似合いますね♡ 純な夢主ちゃんと天元さまの恋がどう進むのか楽しみです。更新はどうか、無理のないペースで!! (2022年4月29日 20時) (レス) @page7 id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蓮 | 作成日時:2022年4月24日 14時