ベタベタ我慢 最終日 ページ27
最後の二人の記憶を消すと、目眩がした。
薬で“個性”をブースとさせていたから当たり前か。
しかし、それを悟られるわけにはいかない。
「これで以上ですよね？
それでは依頼料は忘れないようにお願いしますよ」
「わかっていますよ、今回はありがとうございました」
その言葉に見送られながら、私は今回の仕事場をあとにした。
しばらく歩いてから、私は路地に入り膝をつく。
薬を使うのが初めてだったから、反動が大きいのかも。
１秒でも早くトガちゃんに会いたい、そう思うのに気持ち悪くて歩けない。
ふう、はあ、ふう。
息をゆっくり吐き出しながら気持ちを整える。
そんなとき、後ろから声がかけられた。
「そこにいるのはAか？
こっちの方で仕事だったのか...ってどうしたんだ」
駆け寄ってきてくれたのは、荼毘さんだ。
また火災事件でも起こそうとしていたんだろうか。
なんて、のんきなことを考えるくらいの余裕が生まれる。
「ああ、荼毘さん
昨日からちょっと仕事で...」
へへッと誤魔化しながらそう言うと、「気色ワリィ...」荼毘さんは私の顔を見てそう言った。
しかしその顔は、私を心配するような、そんな顔で。
気がつけば、私は誤魔化して作った笑みを崩していた。
「キャパで気持ち悪くて
少しでも早くトガちゃんに会いたくて頑張ったらこうなっちゃいました」
「バカじゃねーの」
間髪入れずに荼毘さんの呆れた突っ込みが入る。
「頑張ってそうなったらダメだろ」
荼毘さんはそう言いながら笑った。
つられて私も「ですよね」と言いながら笑ってしまう。
気持ち悪さがとれていくような気がする。
「アジトに戻るなら、俺も一緒に行く」
ひとしきり笑ったあと、荼毘さんがそう切り出した。
急な提案で驚いたけれど、一緒に行ってくれるのならありがたい。
一人じゃアジトまで無事に行けるかわからなかったから。
「いいんですか？」
確認するように訊くと、ああ、と頷いてくれた。
「ただし、貸しだから」
最後のこの一言がなければ、私は荼毘さんに惚れていたかもしれないな。
いや、もちろんトガちゃんが一番なのは揺るがないけれど、ね？
荼毘さんに１つ借りをつくり、私はアジトまで戻ってきた。
歩いている間もずっと気持ち悪くて、途中からは荼毘さんに背負われて運ばれるくらい。
しかし、トガちゃんを見つけた、その刹那。私の気持ち悪さは消えた。
そして、荼毘さんの背中を降りトガちゃん抱きつく。
辛い仕事をしていたんだ。
我慢の時間は、もう終わり。
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鈴蘭(プロフ) - ゆいなさん» コメントありがとうございます！トガちゃんが大好きな方にそう言ってもらえて光栄です！ (2020年8月21日 21時) (
レス) id: f42ad491f0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいな(プロフ) - トガちゃん大好きなので最高です！、 (2020年8月15日 23時) (レス) id: ec54d11116 (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - 月雪桜@歌い手好きさん» コメントありがとうございます！トガちゃんの魅力が伝わっていて安心しました。次回作、何を作るかはわかりませんが読んでくださると嬉しいです！ (2018年11月20日 22時) (レス) id: f42ad491f0 (このIDを非表示/違反報告)
月雪桜@歌い手好き(プロフ) - とてもトガちゃんの魅力が表にでていて(ヤンデレ的な意味も含めて)とても良い作品だと思いました!完結おめでとうございます!とても面白かったです。次回作も期待しております! (2018年11月20日 22時) (レス) id: ada51b0201 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鈴蘭 | 作成日時：2018年9月19日 23時
