知ってはいけない

無知の不知 ページ13

スマホのアラームで目を覚ました。
アラームの設定時刻は六時半過ぎ。今日は寝坊をせずに済みそうだ。アラームを止めようと手を伸ばすと、あるはずのそれではなく、壁に当たった。

なんでだ、と思いながら体を起こすと、何故かベッドに横向きになって寝ていた。
寝相が悪いにも程がある、と自分に呆れる。変な体勢で寝たせいか、体の節々が痛い。今日も部活なのに。

何故こんな体勢で寝ていたのか、昨日の記憶を引っ張り出してみてもまるで思い当たる節がない。遅くまでパソコンを開いていたことは覚えているが、何故そうしたかも思い出せない。


「……あ、パソコンの電源切ってない！」


慌ててパソコンの前に行く。
幸い、充電は僅かだがまだ残っていた。電源を切る前に、昨日何を見ていたのか思い出そうと思い至って、画面を開く。


そこには、ページは存在しませんの文字が。


本当に何を見ていたんだ、私は。
ますます謎が深まるばかりだが、多分操作ミスでもしたんだろう。タブを閉じ、パソコンの電源を落とした。




「美玖、風邪はちゃんと治った？」
「ん、二日も休めば元気になるよ。あ、ゼリーありがとね、美味しく頂いた」
「良かった！」


三日ぶりに見る親友の顔色は良く、元気そうで安心した。昨日は学校に着いてから知ったのだが、中々熱が下がらなかったらしい。


「そういえばA、あれはどうだったの？」
「あれって？」
「あの餅みたいな名前の……よもぎさんだっけ？」
「……？誰それ」
「えっ」


心当たりがないので首を傾げると、親友は驚いた顔で私を見つめる。と思ったら、呆れ顔に変わった。


「この前散々熱弁してたくせに忘れたの……？」
「熱弁……した…………？私が……？」
「えぇ……？」


大丈夫？頭でも打った？と半ば失礼なことを言いつつも、彼女は本当に私を心配しているようだった。でも肝心の私にはそんな記憶は一切ない。どうやっても三日前の登校時の会話が思い出せない。

それを話すと、勘違いだったのかな……と、親友は納得していない様子で呟く。
三日前のことが思い出せないのは自分でも不思議だとは思うけれど、思い出せないならそれでいいや、と思えてしまっている。

何となくそれが少し怖くて、少し身震いした。

あとがき→←夢現

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す