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『なに、してんの。』
「会いたくなった、って言ったら怒るやろ?」
半年。たったの半年会っていないだけなのに、貴方はどんどんカッコよくなっている。ズルイくらいに。
……もう、私が隣にならべないくらいに。
『怒らんよ、そんな元気もない。』
「……ごめんな。」
またそうやってすぐ謝るの。センラは悪くないのに。悪いのは我慢できなかった私の方なのに。
『電話、どしたの?』
「Aの後ろ姿が見えて、つい、な。」
出てくれんかったけど、と少し寂しそうに笑う。……そっか、それも見られちゃってたんだ。
……なら、少しは言いやすいよね。
『うん、それが私の答え、やから。』
「そんな辛そうな顔しといてんのに、はいそうですか、とは言えんよな。」
『……なにそれ、』
相変わらずキザ、というかなんというか。
顔もちゃんとかっこいいからサマになっているあたりが相変わらず少しムカついたりする。
……私の気持ちをわかってしまっているところも。
センラはいつもいつも、私の気持ちを理解してくれて、私の事を尊重してくれる、のに。
『もう会いたくなかったの!』
「嘘つき。」
『嘘じゃない、ほんとだもん!』
小さい子が駄々をこねるように、少し大きめの声でセンラの目を見れずにそう告げる。
その言葉を否定したら私が更に拗ねることなんてお見通しなんだろう。貴方は笑って私の頭を撫でながら、
「……わかっとるよ、Aの事はなんでも。」
.
全く、調子が狂ってしまう。
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ほさと - とても感動しました。占ツクの歌い手様を扱った作品には珍しくしっかりと小説になっていて、一介の読書好きとしても嬉しかったです。どの作品もとても美しい比喩があり、音読したい作品だなぁと思いました。 (2019年7月14日 20時) (レス) id: fdc2472f82 (このIDを非表示/違反報告)
弓乃 - 皆様の素晴らしい文章に心が震えました。ありがとうございます。執筆お疲れ様でした。これからも頑張って下さい。 (2019年6月17日 16時) (レス) id: d99258de7b (このIDを非表示/違反報告)
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