【センラ】会いたくない会いたい/りある ページ26
××
『……ねえ、センラ、別れよ。』
「……うん、ごめんな。」
×
半年前、高校から10年付き合っていた彼氏と別れた。
彼を愛していたし彼も愛してくれていて幸せだった。だけど、他の女の子に囲まれる彼の姿に、他の女の子達に割く時間の多さに私が耐えられなくなったの。
仕方ない事だってわかっていたのに、応援していた筈だったのに、心が疲れてしまったんだ。
「おねえさん！一緒に飲まない〜？？」
『……結構です。』
軽々しく酔っているからと声を掛けてる男の人。
彼はよくお酒に溺れていたけれど、いわゆる浮気と呼ばれるような事は１度だってしなかったのに。
…自分から別れを告げたのに、まだセンラのことを考えてしまっている自分に自己嫌悪する。
「ねえ、すきだよ。」
「私も〜！！すきすきだいすき！！」
すれ違う高校生は、幸せそうにそう笑う。
…私たちにもあんな時代があったなんて笑っちゃうな。
君はいつも右側を歩いて、私の右手を温かい手で包んでくれていたよね。なにもない右手が少し寂しい。
……友達だってたくさんいるし、寂しくなんてない。
恋だけが全てじゃない、今だって楽しいから。
『……でんわ、？』
不意に気づいた着信。
ゆっくりゆっくり、と表示された文字を見れば、
センラ
カタカナの貴方のもう１つの名前。
半年前から見ないようにしていた名前。
『……っ、なんで今更。』
時が止まった気がした。
……いや、あの日から止まってしまっていたのかもしれないなぁ、君と別れたあの日から。
スマホを持つ手が震える。
会いたくなってしまうから、連絡しないでよ。
恋しくなってしまうから、声を聞かせないでよ。
何度も何度も忘れようとして、新しい恋をしようとして、やっとやっと、忘れ、られそうだったのに。
やっと、平気になってきた筈なのにね。
．
表示された君の名前を睨みつけた。
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違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ほさと - とても感動しました。占ツクの歌い手様を扱った作品には珍しくしっかりと小説になっていて、一介の読書好きとしても嬉しかったです。どの作品もとても美しい比喩があり、音読したい作品だなぁと思いました。 (2019年7月14日 20時) (
レス) id: fdc2472f82 (このIDを非表示/違反報告)
弓乃 - 皆様の素晴らしい文章に心が震えました。ありがとうございます。執筆お疲れ様でした。これからも頑張って下さい。 (2019年6月17日 16時) (レス) id: d99258de7b (このIDを非表示/違反報告)
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