【文スト】大好きな貴方に、手袋を買いに。【男主】

9-4　太宰と女性とミニ家出 ページ38

しかし、本題はここからで、

『それで、えっと……俺……』

こんな些細な事で泊めて欲しいとか、太宰に合わせる顔がないだとか、格好悪いだとか……笑われるだろうか。

国「今日は泊まっていけ。太宰には俺が言ってやる。
……っ、その代わり明日は欠勤などするなという意味だからな！」

『……。ふふっ、有難う。勿論、俺は太宰さんみたいにサボりじゃないからね！』

ちょっとキュンと来そうな台詞も最後のやつで台無しだよ国木田……。という感想は決して口に出さずに感謝だけを伝えておく。

国「A、夕飯は食べたのか」

『……あ、忘れてた。国木田は？』

国「未だだ」

『じゃあお礼にでも何か作るよ。勝手に冷蔵庫漁っていい？』

簡単なものなら俺でも作れるので、泊めてもらう感謝も込めて台所に立った。

冷蔵庫を開けて材料を見ようとした刹那、玄関の呼び鈴が鳴った。


『国木田……誰だと思う？』

国木田の方は振り返らず、問う。

しかし、この質問は二択である。


――Yes(太宰さん)か、No(太宰さんで無い)か、だ。


国「俺の家に人が尋ねてくることなど早々無い」

つまり、太宰さん―Yes―である、と言う事。

『じゃあ俺が出る。心配しないで、きっと大丈夫』

俺が――俺と太宰で解決しなきゃ、この揉め事は解決しない。

国木田にも、自分自身にも、大丈夫と言い聞かせて玄関を開ける。


深呼吸一つ、太宰が見えるであろうドアの向こう、二十センチほど上を見てドアを隙間ほど開ける。


――太宰、ごめん。言い過ぎた――

ちゃんと言おうと思って口を開ける前にドアを思いっきり開けられた。

『う、っわ？！太宰、ちょ』

太「A、すまなかった。さっきの私は気が狂って居たよ。よく考えたら……」

ドアを開けてすぐに抱き着かれて、俺が言いたい事を全部言われた。

しかし言い終える前に太宰が硬直した。

太「国木田くん……Aを有難うね、ちゃんと仲直りするからAは貰っていくね！」

国木田が様子を見に来たのと目があったらしい。
太宰は其の儘俺を抱き上げて踵を返した。

『あ、く、国木田有難う！！お邪魔しました！！』

咄嗟に駆け出す太宰に運ばれて、直ぐに家に着いた。

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