【文スト】大好きな貴方に、手袋を買いに。【男主】

5-2　男で良かった ページ18

元から此処の辺りは人通りが多かった訳では無かったが、さらに人気(ひとけ)のない路地裏へ入っていく。

「ふぅ……この辺で大丈夫かしら。
あ、私はエリス」

『あ、うん……俺はA、だけど。俺お詫びとか大丈夫なんだけど……。こっちも不注意だったし……』


見るからに育ちが良さそうな感じで、なんだか恐れ多い。
お詫びどころか、こっちがワンピース弁償しろとか言われても仕方ないような身なり。


「遠慮しちゃ駄目よ！」

『いやいや……。で、えっと、誰から逃げてんの？』

取りあえず話を逸しちゃえ、と違う話題提供をしてみる。


「リンタロウからよ！ リンタロウってば、私に襞(ふりる)のワンピースなんて着せてこようとするのよ！嫌だから、逃げてきちゃったの！」

『り、リンタロ……？』


誰なんだリンタロウ……。それ犯罪じゃないのリンタロウ……。
と、思うと同時に先刻から既視感を感じていた少女の謎が解けそうな気がした。

『あっ……！』
「ど、どうしたの、A？」


思い出してしまった。
この子、ポートマフィアの首領のとこにいる女の子だ、多分。

昔、太宰がポートマフィアにいた頃に教えてくれた事があった。
その頃は、俺はポートマフィアには入っておらず、太宰と一緒に暮らしていて、毎日お土産話を聞いていた。


すると、これは不味いのでは。
ポートマフィアのお嬢様にぶつかった挙句……仲良しになってしまっては。
しかも、俺、探偵社の人間だぞ。


『や、やばい、お、俺、急に用事思い出しちゃったかも、はは……』


我ながら誤魔化すのが下手すぎる。



「あら、残念ね……。じゃあ、お詫びは今度あった時にさせてもらうわね！絶対よ！」

『う、うん。ごめんね。逃げるの頑張ってね……？』

どうにかなった、と思い路地裏から出ようとする。
そんな俺の前に何かが立ちはだかった。



「こんな処にいたんだねぇエリスちゃん！」


俺でさえ鳥肌が立ちそうだった。

『ひぃっ』

「リンタロウ……。服は着ないって言ったわ！ いい加減気持ち悪い！」

「わ、分かったよエリスちゃん。もう今日は諦めるから、ね？
お願いだからその路地裏の壁ぎりぎりまで下がるのやめてくれないかな？！」


太宰に聞いていた以上の迫力だ。
これが、ポートマフィアの首領なのか……？

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