暗い世界 ページ1
「おーい、スー！花火始まるぞー！！」
「待ってーだいちゃーん！」
今日は待ちに待った金曜日。祁蛾聯神社(かがりじんじゃ)の近くの川で花火大会が開かれる日。
本当はお姉ちゃんたちも誘いたかったけどお姉ちゃんは合宿、チーはお友達と行くから一緒に行けないらしい。だから、チーが友達と行くことができるならスーもだいちゃんと一緒に行っていいか
訊いたらあっさりとOKが出た。
あまり張り切って色々準備しすぎたせいか、花火の開始時間ギリギリになってしまった。
慌てて家を出た私は、だいちゃんと一緒に神社の近くの見晴らしのいい崖まで疾走する。
「速いな、スー！」
「だいちゃんには負けないよ！」
今の速度だと700メートル先の崖まで21秒ほどで着く計算になる。この速さに追いつけるのは口裂け女くらい。本気を出せばライフルの弾より速く走れるけど、そんなことをしたら衝撃やらなんやらで地面が大変なことになってしまう。
意外とあっという間に崖に着いた。私達はそこに持ってきたビニールシートを敷いて座り一息つく。家から持ってきたお菓子やジュースを開ける頃には、花火大会の開始を告げる一発目の大きな花火がドーンと大きな音を立てて上がった。
「「おおー」」
駄弁りながらお菓子を食べ、花火大会も終わりに差し掛かったころ、だいちゃんが急にこんな事を言い出した。
「話し声が聞こえる．．．結構な人数の」
「え？何で？ここにはスーとだいちゃんしか居ないんだけど」
「うーん、でもほんとに聞こえるよ」
そういわれて私は、聞こえてくる音に集中する。するとかすかに、花火の音に交じって人の声が聞こえる。声質からすると、全員成人済みの男性みたいだ。それが6人分聞こえる。所々[兄さん]や[ブラザー]という単語が飛び出すからおそらく兄弟だろう。しかし、声に生きている感じがしない。これは妖というより、幽霊に近い存在だろう。
「ほんとだ。スーも聞こえる。ていうかこれ、幽霊だよね？」
「うん。俺もそう思う。向こうは気づいてるわけじゃないから、今のうちに逃げよう。」
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作者名：海神（かいと） | 作成日時：2019年5月20日 9時
