82、自問自答 ページ32
・
・
「うぅっ…」
起きたか？
いや、魘されているのか。
怖い思いをした後だ、無理もない。
だが…少しばかり助けてやろうか。
皺のよった眉間から髪を退ける。
チュッ
露わになった額に、短い口付けを落とした。
「…ｽｩ…」
眉間の皺がすっと伸びる。
現れた寝顔は思いのほかあどけなかった。
「あなや…」
本当に俺の切っ先をものともせずに堂々と言い返してきたあの女と同じ女か？
つんつん
悪戯心がわいて頬をつつく。
「…んっ…」
嫌がって顔を背けた時…不意に燭台切の言葉が頭を過ぎった。
「……主と同じ…か…」
その言葉は何より俺自身に深く突き刺さった。
俺達は酷い仕打ちを受けた。
主であった梓から。
だがこの女が俺たちに何をした？
手入れをし、住む場所を与え、食事を与え、俺たちに微笑みかけた。
ただ俺達に尽くしてくれた。
俺達が恩を仇で返すような冷遇をしたにも関わらず、当然のように受け入れてくれていたのだ。
いつも笑っていた。
俺たちに対して笑いかけていた。
その笑顔の裏で傷ついていたのでは無いか？
悟られぬように気丈に振舞っていただけなのではないか？
俺はもう二度とこの本丸の誰も傷付けさせぬ。
だが、逆はよいのか？
無害な人の子を傷つけるのは許して良いのか？
自問自答する迄も無い。
眠っているその頭に手を伸ばす。
さらり、と女にしてはあまりに短い髪が指の間からこぼれ落ちた。
この髪も…この者の優しさの表れか。
この女は、人間だ。
腹の底には邪な思いを抱えているやもしれん。
また裏切られる可能性も無いとはいえぬ。
だが、それを判断するにはまだ俺はこの者を知らない。
「……俺も…覚悟を決めねばなるまい。」
闇夜に大きな月が、ただ煌々と照る。
ーーーーーーーーーーーー
あぁ、まただ
自分でも夢だと分かる、10年も前の記憶
夢だから感覚もないはずなんだけど、妙に生々しくて…
「もう…やめてよ…」
思わず呟いた
あー学習しないなぁ私
こんなこと言ったら、逆効果だ
自分が苦しくなるだけ…なの…に…？
すると不意に目の前が青くなった
青？紺色かな？
どうやらそれは狩衣の袖
目を覆ったそれが離れた時には辺り一面が白い花畑になっていた
眼下には霞のような白い花
頭上には満天の星
そして目の前に大きな大きな三日月
壮大な美しさに言葉も出ない
ぼんやりと立ち尽くしたまま月を眺めていた
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 160人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
刀剣乱舞「死なせていただきます」と彼女はいった 【刀剣乱舞】審神者？いやいや、私は補佐役だよ「第弐部」
【刀剣乱舞】ブラック本丸にて好きにやれって言ったら滅茶苦茶命狙われた(´･ω･`)幕...もっと見る
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紫水(プロフ) - ルナさん» うわぁほんとだ。コメントありがとうございます！修正します！ (2019年8月2日 10時) (
レス) id: aa0c16ca22 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ(プロフ) - コメントすみません！沖田君は、一番組組長だと思います！ (2019年7月25日 9時) (レス) id: 3371ec9e8a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紫水 | 作成日時：2019年6月8日 8時
