＊私の瞳に映る１０㎝の世界＊ーオリジナルー (ページ2)

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第２章ページ2

あ、自己紹介が遅れたね。私の名前は、林園心愛。お父さんは少し前に……ううん。私が、僅か１０歳だった頃に…
突然姿を消した。

《心愛の瞳が、宝物でした》

なんて言う、意味が解らない言葉を残して、消えた。遊びから帰って来たらいつも出迎えてくれるお父さんが、居なかった。だから、私はお父さんの生死が解らなくて。それでも私は、生きているのかもしれないけど、もう二度と会えない気がした。

お父さんに会いたいって、昔は思っていたのかもしれないけれど。

私のお父さんは、優秀で誠実で…有名な科学者だったから、誰かに恨まれた可能性だってあると言うのに。
……お母さんも、近所の人も、親戚も世間も、皆心配していないのは変だ。

「 …心愛？どうかしたの？」

あぁ、リン…

「リンなら…解ってくれるよね？」

私の気持ちも、可笑しさにも、全部、全部。

「えっ？」

リンの瞳が、僅かに揺らいだ。これは、リンが戸惑っている時に、昔から決まって見せる「癖」。
なんで、戸惑っているの？心配になった私は、リンの瞳を見つめ返した。

「ね…解ってくれるよね？」

それでも。

「あっ…ごめん、ね」

え？

「なんで謝るの…？可笑しいよ」

当たり前の様に話してきたリンが、まるで別人の様に見えてきて。裏切られたみたいな、突き放されたみたいな。走りながら、リンの表情を思い浮かべてみる。

あんなに戸惑ったリン、初めて見た。